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東京地方裁判所 昭和50年(行ウ)131号 判決

原告 小日向市郎 外二名

被告 大門土地区画整理組合

主文

一  原告小日向市郎及び原告本橋武雄の次の各処分が不存在又は無効であることの確認を求める訴えをいずれも却下する。

1  被告が原告小日向市郎に対し昭和四九年一二月二六日付けの土地区画整理法一三三条の公告をもつてした別紙物件目録記載(四)1の土地についての同法七七条二項の建築物等の移転の通知及び照会

2  被告が原告本橋武雄に対し昭和四九年一二月二六日付けの土地区画整理法一三三条の公告をもつてした別紙物件目録記載(四)2の土地についての同法七七条二項の建築物等の移転の通知及び照会

二  原告小日向市郎及び原告本橋武雄の次の各処分の取消しを訴める訴えをいずれも却下する。

1  被告が原告小日向市郎に対し昭和四六年六月二日付けでした別紙物件目録記載(一)1ないし3、9ないし15及び19の土地についての仮換地指定処分

2  被告が原告本橋武雄に対し昭和四六年六月二日付けでした別紙物件目録記載(二)10の土地についての仮換地指定処分

三  原告小日向市郎及び原告本橋武雄のその余の請求並びに原告本橋利男の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた判決

一  原告ら

1  主位的請求

(一) 次の各処分は無効であることを確認する。

(1) 被告が原告小日向市郎(以下「原告市郎」という。)に対し昭和四六年六月二日付けでした別紙物件目録記載(一)の各土地(以下「従前地(一)」と総称し、各土地を同目録の順号により「従前地(一)1」等という。)についての仮換地指定処分

(2) 被告が原告本橋武雄(以下「原告武雄」という。)に対し昭和四六年六月二日付けでした別紙物件目録記載(二)の各土地(以下「従前地(二)」と総称し、各土地を同目録の順号により「従前地(二)1」等という。)についての仮換地指定処分

(3) 被告が原告本橋利男(以下「原告利男」という。)に対し昭和四六年一一月二〇日付けの土地区画整理法(以下「法」という。)一三三条の公告をもつてした別紙物件目録記載(三)の各土地(以下「従前地(三)と総称し、各土地を同目録の順号により「従前地(三)1」等という。)についての仮換地指定処分

(二) 次の各処分は不存在又は無効であることを確認する。

(1) 被告が原告市郎に対し昭和四九年一二月二六日付けの法一三三条の公告をもつてした別紙物件目録記載(四)1の土地についての法七七条二項の建築物等の移転の通知及び照会

(2) 被告が原告武雄に対し昭和四九年一二月二六日付けの法一三三条の公告をもつてした別紙物件目録記載(四)2の土地についての法七七条二項の建築物等の移転の通知及び照会

(三) 訴訟費用は被告の負担とする。

2  予備的請求

(一) 次の各処分を取り消す。

(1) 被告が原告市郎に対し昭和四六年六月二日付けでした従前地(一)1ないし3、9ないし15及び19についての仮換地指定処分

(2) 被告が原告武雄に対し昭和四六年六月二日付けでした従前地(二)10についての仮換地指定処分

(3) 被告が原告利男に対し昭和四六年一一月二〇日付けの法一三三条の公告をもつてした従前地(三)についての仮換地指定処分

(二) 訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

1  一―(二)記載の請求に係る訴えをいずれも却下する。

2  原告市郎及び原告武雄のその余の請求並びに原告利男の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  原告らの請求原因

1  被告らは、東京都板橋区赤塚及び下赤塚町一帯を施行地区とし、昭和四〇年一二月七日東京都知事から設立認可を受けた土地区画整理組合である。

原告らは被告の組合員で、被告の施行する土地区画整理事業(以下「本件事業」という。)の施行地区(以下「本件施行地区」という。)内において、原告市郎は従前地(一)を、原告武雄は従前地(二)を、原告利男は従前地(三)を、それぞれ所有している。

2  被告は、昭和四六年六月二日付けで、原告市郎及び原告武雄に対し、同年一一月二〇日付けの法一三三条の公告をもつて原告利男に対し、それぞれ従前地(一)ないし(三)の各土地につき別表一の「街区及び符号」及び「面積」欄記載のとおり仮換地指定処分(以下「本件仮換地指定」という。)をした。

3  しかしながら、本件仮換指定地は、次のとおり明白かつ重大な瑕疵があるので無効である。

(一)(1) 本件施行地区内には一般国道一七号線(以下「国道一七号線」という。)改築工事に係る道路用地(従前地(一)4及び5並びに同(二)1を含む。)が存するところ、被告は、昭和四三年一月一一日建設大臣との間で、右道路用地について建設大臣が負担する法一一九条の二第一項の公共施設管理者の負担金(以下「本件負担金」という。)を五億八九二六万五〇〇〇円と定める旨の覚書(甲第二四号証。以下「本件覚書」という。)を交換し、本件負担金の額を取り決めた。本件覚書の交換は、総会又は総代会の検討も議決も経ず、理事長又は一部の執行機関のみの判断で行われた。

(2) ところで、本件負担金に関する事項は、法一五条五号にいう「費用の分担に関する事項」に該当するので定款に記載しなければならない。ところが、大門土地区画整理組合定款(以下「定款」という。)には、六条に「この組合に要する費用は、次の収入金をもつてこれに充てる。(一略)。二公共施設管理者負担金。(三以下略)」という規定があるのみで、右負担金の額の決定手続等については何ら定めるところがない。したがつて、本件負担金の額を取り決めるためには、まず定款変更の手続を経る必要があり、法三一条一号。三四条二項、土地区画整理法施行令(以下「令」という。)二条一項一号の規定により総会の特別議決が必要である。

そうとすれば、右特別議決を欠く、本件負担金の額の取決めには重大な瑕疵がある。

(3) また、本件負担金の額の取決めは、その性格からして法三一条の列挙する総会の議決事項のうち、四号の「経費の収支予算」の決定よりも慎重になされるべきものであり、五号の「予算をもつて定めるものを除く外、組合の負担となるべき契約」又は九号の「保留地の処分方法」に準じるものであるから、同条四号、五号及び九号の規定の類推適用により総会又はこれに代わる総代会の議決が必要であると解すべきである。

そうとすれば、本件負担金の額の取決めは、右いずれの議決をも欠く点において重大な瑕疵がある。

(4) また、本件覚書は、仮換地の指定はおろか、仮換地の予定地の図面作成(昭和四四年初めに業者へ発注)にも先立って締結されたものであるが、本件負担金は、その金額の大きさからして被告の重要な財源であつて、その額の取決めは、他の収入源、保留地の決定ひいては換地計画全般に直ちに重大な影響を及ぼすものである。

のみならず、本件覚書は、国道一七号線の道路用地に該当する被告の組合員の土地につき、一筆ごとに用地費及び移転補償費を計上しているのであつて、右土地所有者の権利と密接に関連しているものである。

このように、被告の収入及び原告らをも含めた各組合員の権利に重大な関係のある本件負担金の額の取決めは、いずれにしても、各組合員に資料提供の上、その検討の下に行われるべきである。

そうとすれば、本件負担金の額の取決めは組合員の検討なしに行われた点において重大な瑕疵がある。

(5) (1)ないし(4)によれば、本件負担金の額の取決めは無効というべきである。

被告は、右取決めを前提として仮換地の指定を行つたものであり、また、本件負担金の額が変更になれば、仮換地の指定も変更されるという関係にあるので、右取決めの瑕疵は本件仮換地指定に当然に承継されると解すべきである。

そうすると、本件仮換地指定にも重大な瑕疵があるといわざるを得ない。

(二)(1) 被告は、原告らに対し、昭和四四年一〇月四日付け通知書で、従前地(一)ないし(三)につき、仮換地予定地をそれぞれ指定した。右通知書には、同日から仮換地の指定がなされるまでの間、従前地から仮換地予定地へ使用収益権が移動すること及び右指定に対して不服がある場合は同月一八日までに被告に申し出るべき旨が記載されていた。

(2) ところで、定款七二条は、「理事は、工事施行のため必要があるときは、仮換地の指定前においても関係権利者の同意を得て仮換地の予定地として、その全部又はその部分を指定することができる。」と定めており、仮換地予定地の指定には関係権利者の同意が必要であることを明らかにしている。

(3) ところが、被告は、事前に原告らに相談せず原告らの同意を得ないまま右条文に反して前記仮換地予定地の指定を行つた。原告らは、右指定の内容に承服できなかつたので前記不服申出期間内に被告に不服を申し出たが、被告はこれを十分に顧慮せず、何の判断も示さないまま右指定とほぼ同一内容の本件仮換地指定を行つたものである。

してみれば、前記仮換地予定地の指定は無効であるからこれに続く本件仮換地指定にも重大な瑕疵があるというべきである。

(三)(1) また、定款七三条は、「この組合の仮換地の指定は、建築物等の移転又は除却が完了する前においても、施行地区の部分に分け又は全部について行うことができる。」と規定しているが、これは、原則として建築物等の移転又は除却の終了後でなくては仮換地の指定を行つてはならないことを定めたものと解すべきである。

(2) しかるに、本件仮換地指定は、従前地(一)ないし(三)について建築物等の移転又は除却が完了せず、かつ、被告において右移転又は除却をなす努力さえしていなかつた時期に、原告らの前記道路用地内の従前地に対する使用収益権を奪う目的のため強行されたものであり、極めて重大な瑕疵があるといわなければならない。

(四) 被告の組合員たる三輪時弘(以下「三輪」という。)。武田素市(以下「武田」という。)、小関辰男(以下「小関」という。)及び天野善三郎(以下「天野」という。)の四名(以下「三輪外三名」という。)に対する仮換地指定は、以下のとおり、右四名に不当な利益を与えるもので、本件仮換地指定と比較すると著しく公平さを欠くとともに、被告の理事長たる星野金吾(以下「星野」という。)の私腹を肥やすためのものであり、また、手続的にも違法なものである。土地区画整理事業においては、一部の組合員に不正な仮換地指定を行えば、直ちにそのしわ寄せが他の組合員に及ぶのであるから、右のような不正は本件仮換地指定の重大な瑕疵となる。

(1) 三輪は東京都板橋区下赤塚町二六六四番五(以下、同町所在の土地は地番のみをもつて略記する。)の土地一五・九五坪、武田は同番四の土地一四・三七坪、小関は同番三の土地一一・六六坪、天野は同番二の土地一一・三〇坪をそれぞれ所有し、これら四筆の土地は地続きとなつていた。

被告理事会は、昭和四三年一〇月一八日、右土地の近くで、三輪に対し二九・三三坪、武田に対し二五・四五坪、小関に対し二六・六六坪、天野に対し二一・八〇坪の仮換地予定地を指定することを決定した。右仮換地予定地は、前記従前地と比較し、三輪分が一三・三八坪、武田分が一一・〇八坪、小関分が一五・〇〇坪、天野分が一〇・五〇坪、それぞれ多くなつているが、被告理事長星野は、同年一一月五日、三輪外三名に対し、右増仮換地分を一坪当たり一一万円で交付する旨を約し、右代金を受領した。そして、星野は、右代金を個人のものとして領得した。

一方、星野は、個人で、同月二五日、山中電気株式会社(以下「山中電気」という。)から、本件施行地区内の二六四一番二の土地一二〇坪を一坪当たり六万二七〇〇円で買い受け、同月二八日受付けで所有権移転登記を受け、昭和四四年三月一三日受付けで、右土地を同番二及び四ないし八に分筆し、同月一九日、そのうち同番四を天野に、同番五を小関に、同番六を武田に、同番七を三輪にそれぞれ売却し、その旨の所有権移転登記をしたが、これらの売却土地の面積は、前記各増仮換地分の面積にほぼ一致している。

そして、被告は、昭和四六年六月二日付けの仮換地指定において、昭和四三年一〇月一八日の前記決定のとおり、三輪の二六六四番五及び二六四一番七の二筆につき二九・三三坪の一仮換地、武田の二六六四番四及び二六四一番六の二筆につき二五・四五坪の一仮換地、小関の二六六四番三及び二六四一番五の二筆につき、二六・六六坪の一仮換地、天野の二六六四番二及び二六四一番四の二筆につき二一・八〇坪の一仮換地をそれぞれ指定した。

(2) 右によれば、星野は、結局のところ、一坪当たり六万二七〇〇円で購入した土地を増仮換地分として三輪外三名に対し一坪当たり一一万円で売却したことになり、事実上仮換地を自由に指定し得る立場を利用して、一坪当たり四万七三〇〇円、合計約二三六万円の売買差益を得たことになる。

(3) また、三輪他三名が昭和四四年三月一九日に購入した二六四一番四ないし七の宅地は、同人らが従来から所有していた二六六四番二ないし五の宅地とは離れており、かつ、それぞれ独立にみれば公道に接しておらず、宅地として利用できない土地であつた。しかるに、三輪外三名は、右各二筆の土地を一か所にまとめた仮換地指定を受け、減歩もされなかつたのであるから、本件仮換地指定と比較し余りに有利であり、公平を欠くものである。

(4) 被告理事会は、昭和四三年一〇月一八日、三輪外三名に対する仮換地予定地の指定を決定しているが、仮換地予定地の指定は、定款七二条の規定により「工事施行のため必要あるとき」に限り例外的に可能なものである。しかるに、三輪外三名に対する仮換地予定地の指定は、工事施行のためではなく、換地処分を行うためのものであつて、定款の認めない違法なものである。しかも、右仮換地予定地の指定の決定は、被告において何らの換地図も作成していない段階で行われたものであるが、このような段階で、既成事実を作つてしまうこととなる決定を行うことは違法である。

(5) してみると、右仮換地予定地指定決定のとおりなされた三輪外三名に対する仮換地指定には重大な手続的瑕疵があるというべきである。

(五) 原告らは、被告に対し、本件仮換地指定の以前から(一)ないし(四)の瑕疵を指摘してきており、これらの瑕疵は明白なものである。

4(一)  被告は、昭和四九年一二月二六日付けの法一三三条の公告をもつて、原告市郎に対しその所有する別紙物件目録記載(四)1の土地(同(一)6の土地と同一)につき、原告武雄に対しその所有する同(四)2の土地(同(二)4の土地と同一)につき、それぞれ法七七条二項の建築物等の移転の通知及び照会(以下「本件通知及び照会」という。)をした旨主張している。

(二)  しかし、本件通知及び照会の公告はなされていない。

(三)  仮に、本件通知及び照会の公告が行われたとしても、右は被告市郎及び原告武雄に対する本件仮換地指定を前提とするものであるところ、本件仮換地指定は3で述べたとおり無効であるから、本件通知及び照会も無効といわなければならない。

なお、本件通知及び照会に係る建築物等の移転が既に執行されてしまったとしても、本件通知及び照会の無効等を確認することは、被告に右執行の権能がなかつたことを確定することとなり、被告の原状回復義務及び損害賠償義務の存在の先決事項となる意義を有し、訴えの利益がある。

5  本件仮換地指定が仮に無効でないとしても、そのうち原告市郎の従前地(一)1ないし3、9ないし15及び19、原告武雄の従前地(二)10並びに原告利男の従前地(三)についての仮換地指定は、以下のとおり、仮換地が従前地と照応せず、また、被告の役員たる組合員にする仮換地指定と比較して不公平であるから、照応の原則及び公平の原則に反し、違法であつて取り消されるべきである。

(一)(1) 原告市郎の従前地(一)1ないし3につき街区番号二三符号九(以下「二三区九号」といい、他の仮換地もこの例による。)が仮換地として指定された。従前地(一)1及び2は、接していてほぼ正方形を形成し、南側及び西側で道路に面した角地であり、同(一)3は、それ自体としては道路に面していないが、同(一)18に接し、これと併せて利用し得る土地であつた。

しかるに、右仮換地は、従前地(一)3との関係では現地仮換地の原則に反する飛仮換地である上、西側で道路に面するのみで南側は別の者の土地に接していて角地ではなく、形状も北東部にくぼみを有する細長い土地であり、減歩率も、被告の仮換地指定の平均値である一九・一%(パーセント)より高い二七・〇六%であつて、極めて不利な仮換地である。原告市郎に対しては、角地の二三区八号を仮換地として指定すべきであつた。

(2) 右と同様飛地が一括仮換地された例として、被告の設計担当の理事である本橋太郎に対する仮換地をみるに、二五七一番一などの一団の土地と二六七四番五につき三九区四号が仮換地として指定されている。二五七一番一などの一団の土地のうち、二五七一番三及び二五七三番五は道路敷であるし、右一団の中心をなす二五七一番一及び二五七三番三は道路に接しておらず、また、必ずしも各土地が連続していない。また、もう一方の二六七四番五は、西側で道路に接しているが、右土地は被告が設立された後の昭和四三年一一月四日に旧所有者から安価で購入されたものである。

しかるに、これらの仮換地たる三九区四号は、南側及び北側で道路に接し、ほぼ正方形の土地となり、利用価値が増加しており、減歩率も二〇・〇五%にすぎない。右の例と比較して、原告市郎に対する二三区九号の仮換地指定はあまりに不利益な取扱いというべきである。

(3) また、同じく飛地が一括仮換地された例として、被告の監事である田中鶴三に対する仮換地をみるに、二五五三番及び二五五五番につき四七区二号が仮換地として指定されている。二五五三番は道路に接しておらず、二五五五番は東側及び南側で道路に接するが、南北に細長い土地であつて利用価値が乏しく、しかも、これらは墓地の北側に当たり、低地でもある。

しかるに、これらの土地は、現地仮換地の原則を破つて、全く別の地域である高台の四七区二号(この土地は田中鶴三に対する他の仮換地である四七区一号、三号及び五号に接している。)に仮換地されてその利用価値が上昇したが、その減歩率は二八・七一%にとどまつており、原告市郎の場合とほぼ同一である。

また、田中鶴三は、他にも、一方だけが道路に接していた二四三九番が、南側及び西側で道路に接している二区二号へ仮換地されるという利益も受けており、原告市郎と田中鶴三に対する取扱いが不公平なことは明らかである。

(二)(1) 原告一郎の従前地(一)9ないし15につき三三区一号及び同区三号が仮換地として指定された。右従前地はほぼ一団の四角な土地を形成し、現況は畑と田が入り混じつていた。

しかるに、三三区一号及び同区三号は、凸凹の不整形な低地であつて、従前の所有者が鯉を飼つていた池であり、しかも、東側で本件施行地区外のごみ捨場となつている高台と接し、どのように土盛をなそうが、右高台の崖下となつてしまい、従前地とは現況、地目及び利用価値等とが全く似ていない。しかも、被告はいわゆる宅地造成工事は施工しない方針なので、仮換地を池から宅地に変える工事は原告市郎の負担で行わねばならず、著しい不利益を被るのである。

(2) ところで、三三区は(1)で述べたとおり利用価値の低い地域であるところ、三三区一号の一部、同区三号ないし七号及び同区一二号は、従前の二四九九番及び二五二六番ないし二五三一番に該当し、これら七筆の土地は被告の総代である本橋太平の所有地であつた。右七筆の土地のうち、二五二六番及び二五二九番は三三区四号に仮換地されたものの、他は現地仮換地ではなく、二五三一番は三五区二号へ、二五三〇番は三五区七号へ単独で飛仮換地され、二五二七番及び二五二八番は三五区一号へ一括仮換地され、二四九九番は四七区四号へ一括仮換地され、いずれも、三三区を脱出して利用価値の高い土地へ仮換地されている。本橋太平に右のような極めて有利な飛仮換地をすべき理由はなく、原告市郎の不利益な扱いと比べて著しく不公平であり、本橋太平への仮換地の一部に原告市郎の仮換地を指定することができたはずである。

(3) また、原告市郎の従前地(一)12ないし15は、四七区三号の東北部分に該当するが、右四七区三号には、田中鶴三の所有であつた二五四四番一ないし三が飛仮換地されている。しかし、被告の現地仮換地の方針からみて、右仮換地はその理由がなく、更に、角地交付の原則からみても、四七区三号の東北部分の角地には原告市郎の従前地(一)12ないし15が現地仮換地されるべきだつたのである。

(三)(1) 原告市郎の従前地(一)19につき三三区一二号が仮換地として指定された。従前地(一)19は、形状が正形でなく、墓地である二五一三番の土地を通らないと通行できない土地であつたが、高台に位置していた。

ところが、右仮換地は、現地仮換地の原則に反している上、三三区三号と接した低湿地であつて、従前地と照応せず、減歩率も仮換地予定地の時で四三・二八%に及び、これに低地修正をした仮換地の時でも二八・一五%と平均減歩率を大幅に上回つていて、原告市郎に不利益である。

(2) 他の道路に接していない土地の仮換地の例と比較するに、本橋太平は二五三〇番を所有していたが、これは低地から高台の三五区七号へ仮換地されたにもかかわらず、減歩率は三四・四五%にとどまり、原告市郎の場合より格段に優遇されている。

(3) また、被告の評価員である本橋勇蔵に対する仮換地と比較すると、同人の所有する従前地一一筆のうち六筆が道路に接していない土地であつたのに、これに対する仮換地は、四二区二号、同区三号、四三区二号及び同区三号という三方を道路に囲まれた利用価値の高い各一団の土地である。また、減歩率をみても、二六三七番の場合で二六・〇二%、二六三八番の場合で一九・四九%、二六三九番の場合で三四・四〇%であり、これらは従前地が道路に接していなかつたこと以外特段の修正要素もないのに、原告市郎に対する仮換地と比較して有利に過ぎる。

(四)(1) 原告武雄の従前地(二)10につき三七区九号が仮換地として指定された。従前地(二)10は従前地(二)1及び5ないし9と接してほぼ長方形の一団の土地となつており、原告武雄の屋敷内の土地であつた。しかも、従前地(二)10は平坦地であつて、現況は畑であつたものの直ちに優良な宅地に造成できる土地であつた。

しかるに、三七区九号は、現地仮換地ではなく、国道一七号線より東側へ坂を下つた低地であつて、周囲の道路より三ないし四メートルも低く、道路一つ隔てた所は墓地という劣悪な土地であり、従前地とは全く照応していない。

(2) ところで、右従前地の隣地である二四八八番のほぼ半分四五二・一六平方メートルは、被告の総代であつた訴外本橋助興の所有であつたが、右土地は原告武雄の前記仮換地の隣地である三七区四号へ仮換地されている。

ところが、三七区四号の面積は五〇四平方メートルであり、九・六%の増歩になつている。しかも三七区九号と三七区四号の地積は、その境界を単純に移動させることによりいくらでも加減し得る地形になつており、右増仮換地は地形等のやむを得ない理由によるものではない。

(3) また、従前地(二)10は、仮換地予定地の段階では二九区四号が指定されていたが、その際の減歩率は三七・五%であつた。

しかるに、仮換地指定の段階では右二九区四号を含む土地に本橋助興の従前地が仮換地されているが、その際の減歩率は二一・五九%であつて、原告武雄に対する仮換地予定地の指定の際より格段に有利である。

(4) 更に、本橋助興の仮換地をみるに、二九区一四号への仮換地は、従前地が二八二・九七平方メートルと三三三・八八平方メートルの二筆であるのに対し、仮換地は七〇〇平方メートルであつて、(2)と同様に増仮換地となつている。本件事業においては、減歩負担が原則(大門土地区画整理組合換地規程(以下「換地規程」という。)五条一項本文)であるのに、このような増仮換地をなすのは極めて不公平である。

なお、被告は、右増仮換地について、既成宅地では建物を移動させないという原則のため、減歩ができない旨主張しているが、換地規程にはそのような条項は存しないので、前提に疑問がある上、二九区一四号の従前地たる二四八三番上の建物は被告の設立後の昭和四三年五月に従前の建物の位置より三・六メートル以上も東側に建て替えられたものである。本橋助興は、当時このような建替えを行えば、換地が変形になることを十分予想し得たのに、あえて東側いつぱいに建て替えたのであるから、同人及び右建替えを承認したであろう被告の役員の負担で右建物を移転するのが当然であり、既成事実を違法に作り上げて、これに基づき増仮換地をなすことは許されない。

(五)(1) 原告利男の従前地(三)1につき一六区一号が、同(三)2及び3につき一六区二号がそれぞれ仮換地として指定された。従前地(三)1ないし3は、相互に接してほぼ正方形をなす平坦な優良宅地であつて、南側及び西側で道路に面し、隣地及び道路との高低差のない角地であつた。

ところが、右仮換地は、一体としてみれば東側、北側及び西側で道路に面する有利さはあるものの、日照の点で重要な南側が他人の宅地となつており、また、傾斜地である上、いずれの部分でも道路より高く、最大高低差が五メートルにも及ぶ長方不整形地である。しかも、北側は、道路のみならず、高島平、ひいては荒川に至るまで低地が続いている所で、北風を遮るものが何もないのであるから、仮換地は宅地としてかなり評価の低い所といわなければならない。しかるに、減歩率は、一七・三一%で平均減歩率とそれ程差がなく、原告利男に極めて不利益な取扱いとなつている。

(2) なお、従前地(三)は、これに近い四〇区七号に仮換地されるべきと思われるが、右四〇区七号には被告の総代である田中吉五郎の従前地が仮換地されており、これによつて同人は四〇区五号、同区六号及び同区七号という南側の評価の高い土地を独占したことになり、原告利男の場合と比べて極めて不公平である。

(六) これまで述べた以外にも被告の役員は不公平に有利な仮換地指定を受けている。すなわち、被告の総代である山本富治は、二四区四号に仮換地の指定を受けたが、従前地は三一四・八四平方メートルであるのに対し、仮換地は四一四平方メートルと増仮換地になつており、かつ、南側及び西側で道路に面するという有利なものである。

6(一)  原告市郎及び原告武雄は、東京都知事に対し、昭和四六年六月二四日付けで従前地(一)及び(二)についての仮換地指定に対し審査請求を申し立てたが、昭和四七年一二月一三日付けで棄却の裁決を受けたので、更に建設大臣に対し昭和四八年二月五日付けで再審査請求を申し立てたところ、昭和五〇年九月二〇日付けで却下の裁決を受けた。

(二)  原告利男は、東京都知事に対し、照和四七年一月二〇日付けで従前地(三)についての仮換地指定に対し審査請求を申し立てたが、昭和四八年三月二六日付けで棄却の裁決を受けたので、更に建設大臣に対し同年四月二六日付けで再審査請求を申し立てたところ、昭和五〇年九月二〇日付けで棄却の裁決を受けた。

7  よつて、原告らは主位的に本件仮換地指定が無効であること及び本件通知及び照会が不存在又は無効であることの確認を求め、予備的に本件仮換地指定のうち従前地(一)1ないし3、9ないし15及び19、従前地(二)10並びに従前地(三)についての仮換地指定処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する被告の認否

1  請求原因1及び2の事実は認める。

2(一)  同3の冒頭の主張は争う。

(二)  同3(一)(1)のうち、施行地区内に国道一七号線改築工事に係る道路用地(従前地(一)4及び5並びに同(二)1を含む。)が存し、被告が昭和四三年一月一一日建設大臣との間で本件負担金の額を五億八九二六万五〇〇〇円と定める旨の本件覚書を交換した事実は認め、その余の事実は否認する。

同3(一)(2)のうち、定款の記載内容は認めるが、主張は争う。

同3(一)(3)の主張は争う。

同3(一)(4)のうち、本件覚書が仮換地の指定前に交換されたものであつて、国道一七号線の道路用地に該当する被告の組合員の土地につき、一筆ごとに用地費及び移転補償費を計上している事実は認め、主張は争う。

同3(一)(5)の主張は争う。

(三)  同3(二)(1)及び(2)の事実は認める。

同3(二)(3)のうち、原告市郎及び原告武雄が不服申出期間内に被告に不服を申し出た事実は認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。

(四)  同3(三)(1)のうち、定款の内容は認めるが、主張は争う。

同3(三)(2)のうち、本件仮換地指定が従前地(一)ないし(三)について建築物等の移転又は除却が完了していなかつた時期に行われた事実は認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。

(五)  同3(四)の冒頭部分のうち、事実は否認し、主張は争う。

同3(四)(1)の事実のうち、被告理事長星野が三輪外三名に対し増仮換地分を一坪当たり一一万円で交付することを約し右代金を受領し、星野が右代金を個人のものとして領得した事実は否認し、その余の事実は認める。

同3(四)(2)ないし(5)の主張は争う。

(六)  同3(五)の主張は争う。

3(一)  同4(一)の事実は認める。

(二)  同4(二)の事実は否認する。本件通知及び照会の公告は、同4(一)記載のとおり行われたものである。

(三)  同4(三)の主張は争う。

4  同5のうち、原告ら及び被告の役員に対する各仮換地指定の内容は認めるが、主張は争う。

5  同6(一)及び(二)の事実は認める。

6  同7の主張は争う。

三  被告の主張

1  本件覚書の交換による本件負担金の額の取決めにつき違法はない。

(一) 法一一九条の二は、「都市計画において定められた幹線街路その他の重要な公共施設で政令で定めるものの用に供する土地の造成を主たる目的とする土地区画整理事業を施行する場合においては、施行者は、他の法律の規定に基づき当該公共施設の新設又は変更に関する事業を行うべき者(以下本条において「公共施設管理者」という。)に対し、当該公共施設の用に供する土地の取得に要すべき費用の額の範囲内において、政令で定めるところにより、その土地区画整理事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めることができる。」と規定しているところ、同項の土地の造成を行う土地区画整理事業の施行者はすべて同項の規定により公共施設管理者に対しその費用の全部又は一部の負担を求めることができると解すべきである。国道一七号線は、令六四条の二第一号及び第二号の規定により法一一九条の二第一項にいう「重要な公共施設で政令に定めるもの」に該当する。そして、本件事業の範囲を定める定款四条はその二号で「公共施設の整備改善を図るため行う公共施設の新設又は変更」を掲げており、国道一七号線の用に供する土地の造成は本件事業の範囲に含まれるものである。したがつて、被告は、法一一九条の二第一項にいう「重要な公共施設で政令で定めるものの用に供する土地の造成を主たる目的とする土地区画整理事業」の施行者に該当し、国道一七号線の管理者である建設大臣に対し、国道一七号線の用に供する土地の取得に要すべき費用の額の範囲内において、本件事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めることができるのである。

そして、法一一九条の二第二項は、「施行者は、前項の規定により公共施設管理者に対し、土地区画整理事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めようとする場合においては、あらかじめ、当該公共施設管理者と協議し、その者が負担すべき費用の額及び負担の方法を事業計画において定めておかなければならない。」と規定しているところ、被告も、その事業計画において、建設大臣が負担すべき費用の額、すなわち本件負担金の額を定めていた。

本件覚書の交換は、事業計画で定められていた本件負担金の額を増額変更するためのものであるが、昭和四二年一二月二六日の第三回総代会においてその案につき承認議決を受けた上、昭和四三年三月二二日の第四回総代会において、本件覚書の交換による本件負担金の額の増額変更の取決めに伴う事業計画の変更について承認議決を受けており、本件負担金の額の取決め及びこれに関連する一連の手続に違法な点はない。

(二) 定款記載事項は法一五条に、総会の議決事項は法三一条にそれぞれ列挙されているが、法一一九条の二に規定される公共施設管理者の負担金に関する事項はどちらにも掲げられておらず、法一五条五号の「費用の負担に関する事項」にも該当しない。

そもそも、公共施設管理者の負担金は事業計画に定めておかなければならないところ、事業計画は、土地区画整理組合の設立の認可申請の際に定めておかなければならず(法一四条、二一条)、右段階では組合の総会も総代会も未だ存在しないのであるから、右負担金の額の取決めについて総会又は総代会の議決をあらかじめ得ることは不可能である。また、公共施設管理者の負担金に関する取決め自体は、土地区画整理組合と公共施設管理者との協議によるものであつて、総会や総代会の議決になじまないことであり、協議結果に応じ、負担金の額及び負担の方法を事業計画において定め、これを変更する場合は事業計画変更の手続をとれば足りるのである。

被告は、本件覚書の交換による本件負担金の額の取決めに当たり、その案につき総代会の議決を得ているが、右取決め自体につき総会又は総代会の議決を得ることはもともと法の要求するところではなく、取決め自体に違法な点はない。

(三) 本件覚書の交換当時、国道一七号線の道路用地については、それぞれ移転先の土地が一応予定されており、被告はこれに基づいて本件覚書中の用地費、建築物移転補償費及び事務費の額を計算したものである。しかし、本件覚書は、右道路用地の所有者と建設大臣との取引価額を定めるものではなく、あくまでも被告と建設大臣との間で建設大臣が負担とする額を定めるものである。したがつて、本件覚書の交換は右道路用地所有者の権利と直接関連するものではない。

しかも、本件覚書一条二項は、本件負担金の額は、「物価の変動その他特別の事情がある場合において甲乙協議して変更することができるものとする。」と定めており、移転先変更等があれば建設大臣と被告の協議により額を変更できることが合意されており、現に昭和四五年三月二六日付け及び昭和五二年二月二三日付けの増額変更の協定が成立している。すなわち、本件負担金の額については、将来現実に必要となつた額を基準とした適正価額により決定されることが保証されているものである。

とすると、本件負担金の額の決定が各組合員の検討のもとに行われる必要もないのである。

2  原告らに対する仮換地予定地の通知は、次に述べるとおり、本件仮換地指定の効力に何ら影響を及ぼさない。

(一) 定款七二条は、被告の施行する区画整理工事施工に当たり、仮換地指定処分及び換地指定処分を順調に進めるため、また、組合員が将来なされるこれらの処分の内容をあらかじめ了知できるようにするため、組合員の同意を得て仮換地の予定地を指定することができるとする趣旨の条項である。しかるところ、原告らに対する昭和四四年一〇月四日付けの仮換地予定地の通知は、「御協力願います。」、「不服がある場合は昭和四四年一〇月一八日までに組合に申し出て下さい。申し出のない場合は御協力を願えるものといたします。」という文言になつており、原告らの同意を求めたものにすぎない。被告は、不服の申出のあつた組合員については、同意が得られなかつたものとして、定款七二条にいう仮換地の予定地の指定がなかつたものとして扱つており、工事及び使用収益権の移動も行つていない。不服の申出のなかつた組合員の土地については工事及び使用収益権の移動を行つたが、これは前記通知のみの効力によるものではなく、通知とこれに対する同意に基づき被告と組合員間の合意によつて行われたものである。

そうすると、仮換地予定地の指定は、法九八条一項の定める仮換地指定処分とは趣旨及び効力において異なるし、しかも、昭和四四年一〇月一八日付け通知は右予定地の指定とも異なるのであるから、原告らの事前の同意を必要とするものではない。よつて、原告らの主張はその前提を欠くものとして失当である。

(二) また、仮換地指定処分以前に必らず仮換地予定地の指定をなすことを要するものでないことは、定款七二条が「指定することができる」と定めていることからも明瞭であり、仮換地の指定を経由していなかつたとしても、本件仮換地指定が違法となるものではない。

3  本件仮換地指定が従前地(一)ないし(三)について建築物等の移転又は除却が完了しない段階で行われたことは違法ではない。

なぜならば、定款七三条は右の段階において仮換地指定ができる旨を定めた規定だからである。なお、本件仮換地指定は、諸手続上の準備が整つたので指定したものであり、原告らの道路用地内の従前地の使用収益権を奪う目的で行われたものではない。

4  三輪外三名に対する仮換地指定は本件仮換地指定の適否とは本来関係のない事柄であるが、念のため付言すれば、右仮換地指定は、以下に述べるとおり適法であり、本件仮換地指定の瑕疵とはならない。

(一) 三輪外三名はいわゆる建売住宅を購入したもので、その所有する二六六四番二ないし五には同人らの建物がほぼ敷地いつぱいに建てられていて、空地がほとんどない状態であつた。

ところが、土地区画整理の結果右各土地の接する区画街路(一二区の西側及び南側に接して構築予定の道路)の路面の高さが堀下げ工事により右各土地よりも約五メートル低くなることとなつていた。そして、右各土地から区画街路までの出入口となる階段等を構築する余地もないので右各土地を被告の負担で路面の高さまで堀り下げ、そこに三輪外三名の建物を移動させざるを得ないこととなつた。しかるところ、一般に、既存建物を同一平面上の他の部分に移動させる引家工事は技術的に容易であるが、現在位置の近くの五メートルも低位にある地上に移動すること、それも敷地に余裕のない建坪ぎりぎりいつぱいの土地上に移動させることは、クレーンでいつたん宙づりにしておいて垂直に下ろすことができるならともかく、それも木造家屋故困難であるから、技術的に不可能に近い状況にあつた。そのため、このまま仮換地指定をなし、三輪外三名が建物を自ら移動せず、被告において移動を執行せざるを得ない場合、困難にぶつかることが予想された。しかも、前記区画街路は仮換地指定前に構築する必要があり、昭和四三年当時、地表より五メートル堀り下げる道路工事が急を要していたところ、右工事によりこれに接する三輪外三名の右各土地に発生する不都合を早期に解決することが必要となつた。三輪外三名からは、増換地又は支出負担付増換地の要望があつたが、これは換地規程により不可能なため被告は応ずることができなかつた。しかし、同人らが施行地区内の他の土地を購入すれば、右購入土地と従来からの所有土地につき一括仮換地の指定を行い、同人らの敷地を増やし、建物の移転工事を行うことが可能であつた。そこで、被告は、昭和四三年一〇月一八日理事会を開き、三輪外三名に土地を譲渡する者がいないかを諮つたところ、出席者の中には譲渡を申し出る者がいなかつた。そこで、星野は、本件事業の遂行の円滑を図るため、施行地区内の自己の所有地を三輪外三名に譲渡することを申し出た。そして、右理事会は、三輪外三名の従来からの所有地である二六六四番二ないし五の近くに、同土地と右譲渡土地に対する原告ら主張どおりの面積の一括仮換地を指定する旨の換地計画を立てることを議決した。ところで、三輪外三名の一括仮換地の面積は右のように確定したが、星野から三輪外三名に譲渡すべき土地の面積をその時点で確定することができなかつた。すなわち、星野の所有地は将来減歩を受ける土地であるところ、星野が三輪外三名に対し同人らの一括仮換地の面積と従来からの所有地の面積の差に相当する面積の土地を譲渡したとすると、星野が不当な利益を受けることになるのである。星野から三輪外三名に対し右面積の土地をいつたん譲渡してしまえば、同人らは過小宅地の所有者であるから、右土地については減歩が行われないことになるからである。本来受けるべき減歩分を上乗せした面積の土地を譲渡しておけば不公平はないわけであるが、右時点では星野の所有地の減歩率が未だ確定していなかつたのである。そこで、星野と三輪外三名は、星野の所有地につき売買契約を締結するとともに、右所有地の減歩率が確定した時点で、減歩後の面積が三輪外三名の一括仮換地の面積と従来からの所有地の面積の差に合致することとなる面積を計算し、星野所有地につき右面積の土地の分筆登記をすること並びに星野の譲渡する土地について三輪外三名に対する所有権移転登記手続は、換地処分の認可後に行う旨の特約を結んだ。

ところが、原告市郎からこの星野の土地譲渡につき疑義が出されたため、被告の監督官庁たる東京都との協議の結果、星野の譲渡すべき土地を減歩率の確定するまでそのままにしておくのはやめることとし、三輪外三名の一括仮換地の面積と従来からの所有地の面積の差に相当する面積の土地につき、星野から三輪外三名に対し所有権移転登記をなし、後日減歩率が確定した時点で減歩すべき面積につき星野から清算金を徴集する方法によつて清算することとし、関係者及び原告市郎もこれを了承した。右取決めを前提に本件事業が遂行され、前記道路工事及び三輪外三名の仮換地予定地の堀下工事も施工でき、同人らに対する仮換地の指定を行つたものであり、右経過に何ら不正な点はない。

(二) (一)によれば、星野から三輪外三名に対する土地譲渡については、清算金によつて公平が図られることになつているので、星野が不当な利益を得るものではない。

また、星野は、以前から所有していた土地の一部を三輪外三名に売り渡す予定だつたのであるが、たまたま、本件施行地区内で山中電気が所有地を売りに出したのでこれを買い受けその一部を三輪外三名に売り渡すことにしたものであつて、山中電気との取引きを前提として三輪外三名との約定をなしたものではない。また、星野と山中電気との契約においては、二筆の土地合計一五〇坪のほか建物二棟が売り渡されたのであるから、仮に、三輪外三名が必要とする面積の土地につき山中電気に買受申込みをしても、それのみについての売買契約が成立するかどうかは疑問であり、結局星野と三輪外三名との契約は、山中電気との契約を念頭に入れても三輪外三名にとつて必らずしも不利なものであつたとはいえない。

のみならず、右山中電気との売買及び三輪外三名との売買は、星野の個人としての取引きであり、その代金額等も星野個人と三輪外三名個人との法律問題であるから、両売買により星野が差益を得たとしても、それは、被告とも、星野の被告の理事長としての職務とも、また本件事業とも何らの関係もないのである。

(三) また、三輪外三名に対する仮換地指定を一括仮換地の指定としたのは(一)で述べたような理由によるものであり、減歩率を零とせざるを得なかつたのは同人らが過小宅地の所有者であつたためで換地規程に従つたものであり、いずれも同人らに不当な利益を与えたものではない。

(四) 更に、三輪外三名に対する仮換地指定には何らの手続的瑕疵もない。被告は、昭和四三年当時、三輪外三名の従来からの所有地に接して道路工事を施行する必要があつたため、同人らの仮換地の予定を検討し、同人らに示しただけであり、そこに何の違法もない。

5  以上のように、本件仮換地指定には原告ら主張の無効事由は存しないから、その無効確認を求める原告らの請求はいずれも棄却されるべきである。

6  本件通知及び照会は、その通知に係る建築物等の移転を目的としてなされ、当該移転の執行の前提たる処分であるところが、本件通知及び照会に係る建築物等については、板橋区長の認可を得て、昭和五〇年一一月一二日、被告によりその移転を執行し終つたものである。したがつて、原告市郎及び原告武雄としては右移転を阻止するため本件通知及び照会の無効等の確認を求める利益はない。

原告市郎及び原告武雄は原状回復請求又は損害賠償請求をなす前提として本件通知及び照会の無効等確認を求める利益がある旨主張するが、原状回復の訴え又は損害賠償の訴えを直接提起し、より直截的に紛争解決を図ることが可能であるから、行政事件訴訟法三六条の規定により訴えの利益を有しないものというべきである。

よつて、本件通知及び照会の無効等確認請求に係る訴えは、いずれも不適法として却下されるべきである。

7  本件仮換地指定のうち、従前地(一)1ないし3、9ないし15及び19、同(二)10並びに同(三)は、以下のとおり照応の原則及び公平の原則に違反していないから、その取消しを求める原告らの請求はいずれも棄却されるべきである。

(一) 被告の仮換地指定は、次のとおり公正な基準に従つて、各組合員間に利益、不利益が生じないように行われたものである。

(1) 本件事業の換地の基準は定款七一条の規定するところであり、「この組合の換地は、事業計画の内容として定めた換地設計の方針に従い、第七〇条の規定による従前の宅地及び権利部分の地積を標準として行う。理事は換地について、あらかじめ総代会の同意を得て定める換地規程に基き処理するものとする。」と定められている。そして、総代会の同意を得て定められた換地規程四条は、換地の位置について、「換地は、事業計画の内容として定めた換地設計の方針に従い、なるべく原位置に近い位置に交付するものとする。原位置に公共用地又は保留地の指定があるときはその付近地若しくはこれに相当する換地を交付する。建物の移築、その他特別の事情がある場合は、原位置を離れ換地することができる。」と規定しており、いわゆる現地換地が原則ではあるが、特別の事情があるときは飛換地等もできることを定めている。

また、換地地積の原則については、換地規程五条一項は、「従前の土地は、減歩負担を受け、増換地は交付しない。但し既成宅地については、利用性を考慮のうえ換地地積を定めることができる。」と規定し、また、同一三条三項は、共通負担地積について、「既成宅地の負担地積は原則として普通地の負担地積の五〇%以内の負担としその地積を算出し既成宅地総地積に対する平均率を従前の土地各筆の地積に乗じた地積とする。」と規定しており、一四条二項は費用負担地積についても右規定を準用する旨規定しており、既成宅地は交付地積の関係では有利な扱いを受けることが定められている。

これらの基準は、仮換地指定にも準用されるものであり、被告は、右基準を前提として本件仮換地指定を行つたものである。

(2) ところで、本件施行地区は、その位置が東京都板橋区西北部の台地に当たり、起伏が多く、高低差は一〇ないし二〇メートル以上もあり、台地部に普通住宅及び農家が点在し、その他大部分が農地又は山林であつた。

被告は、仮換地の割当てだけで公平を図るべく仮換地の割当てを行おうとしたが、右土地の状況及び諸般の事情から仮換地の割当て自体では公平が保てなかつたので、やむなくこれを補充するため、清算金の徴収又は交付によつて調整を図つた。

すなわち、本件事業においては、被告は、従前地を評価して指数を算出し、これに比例指数一・〇〇二七九九(本件施行地区全部の土地についての、従前地の総評定指数に対する土地区画整理後の土地の総評定指数の割合)を乗じた指数と、仮換地を評価した指数を比較し、増指数となつているときは、その増指数につき指数一個当たり金二〇円を乗じて換算した清算金を徴収し、減指数のときは、同じく指数一個当たり二〇円で換算した清算金を交付し、もつて、各組合員の損得をなくして間接的に組合員間の公平を保つている。

(3) また、仮換地指定の公平は、単に一筆の土地の面積や位置等によるばかりでなく、一組合員の土地全部について考慮すべき問題である。減歩率も、個々の土地の仮換地についてのみ決するものではなく、一組合員が本件施行地区内に複数の土地を所有する場合は、当該組合員の所有地全体について決定されるのである。

(4) 被告は、本件仮換地指定を含む、仮換地指定全体について、以上の考え方に従つて、各組合員の土地全部についてこれに照応する仮換地が公平に割り当てられるべく減歩率の計算等を行つた上、仮換地設計だけでは公平が保てなかつた分は、前記指数計算により換算した清算金を各組合員単位で合算して、清算金の交付又は徴収を行い、最終的に各組合員間の公平を全うしたものである。

よつて、個別の土地のみを抽出し、かつ、清算金の徴収、交付を考慮せずに照応の原則及び公平の原則違反をいう原告らの主張は失当である。

(二) 原告市郎の従前地(一)1ないし3の仮換地指定は、照応の原則及び公平の原則に反しない。

(1) 従前地(一)1は南北に長い不整形で、角地といつても幅二メートル前後の狭い農道の分岐点に位置していた。従前地(一)2も細長く南側だけが狭い農道に面し、二筆を併せても必らずしも整形の土地ではなかつた。従前地(一)3は不整形な傾斜のある評価の低い土地であつた。従前地(一)3付近には広大な都市計画公園が造成され、右土地の半分がその敷地に該当し、近接地への仮換地も不可能で、現地仮換地ができなかつたため、従前地(一)1及び2と共に二三区九号に一括仮換地された。そして、二三区九号は、西側全部が幅員六メートルの道路に面し、形も従前地(一)1及び2より整形状である。従前地(一)3については飛仮換地となるが、高評価地への、しかも従前地(一)1及び2との一括仮換地であつて、原告市郎にむしろ有利であつて、照応の原則に反しない。

減歩率は、従前地(一)1ないし3が畑であること、従前地(一)3が高評価地へ一括仮換地となつたことから若干高くなつたものである。

更に、仮換地の北東部のくぼみは、既成宅地上の建物のためであつて、やむを得ない。

(2) 本橋太郎に対する三九区四号への仮換地指定は不公平ではない。

すなわち、二六七四番五は、国道一七号線の道路用地に当たるため、現地仮換地は不可能である。また、これを減歩して単独で換地すると一〇〇平方メートル以下の過小宅地となる。一方、二五七一番一などの一団の土地に対する各減歩により約一三〇平方メートルの土地が生じるが、これに他人の仮換地を指定すると過小である上、地形の関係からも適正でないという事情があつた。そのため、二六七四番五の減歩後の土地を右約一三〇平方メートルの土地に充当して仮換地したのである。

また、道路への面し方は、土地の価値に影響するが、同時に仮換地の評価の指数にも反映されるので、結局、清算金によつて調整がされており、不公平は生じていない。

(3) 田中鶴三に対する四七区二号への仮換地指定は不公平なものではない。

すなわち、二五五三番及び二五五五番付近は、国道一七号線の道路用地が近く、かつ、付近に二五一〇番、二五一二番の既成宅地があるため、仮換地の割当てが難しいところ、二五五三番及び二五五五番は既成宅地ではないので、飛仮換地させるのが合理的だつたのである。

一方、田中鶴三の二五七四番一、二五七三番二及び四、二五七四番二、二五七五番は一団の土地を成しているところ、二五七四番一は二か所で三叉交差点に面するため減歩率が高く、また、その他の土地は既成宅地であるため、これらの土地の減歩分を同人の二五五三番及び二五五五番の仮換地に充てることが合理的であつて、宅地利用増進という公益目的に適合するので、同人の従前地を一か所に集中させて仮換地したものである。そして、道路との接し方による評価の不一致については、清算金をもつて調整されており、公平は失していない。

(三) 原告市郎の従前地(一)9ないし15の仮換地指定は、照応の原則及び公平の原則に反しない。

(1) 右従前地付近は、北側が都市計画公園の敷地となり、幅員六メートルの区画街路及びこれと幅員一二メートルの区画街路の三叉交差点の敷地もあるなど公共用地確保の必要な地域であつて、右従前地も、二五三八番の全部並びに二五三七番、二五三六番一及び二並びに二五三四番の一部が右公共用地に編入されなければならず、しかも、東側が本件施行地区外であるため、右従前地を一団の土地として仮換地するためには、全体的に位置を南へ移動させざるを得ない事情にあつたため、相接続している三三区一号及び同区三号へ仮換地したものである。

従前地は、三方が水路に囲まれた低地で畑又は湿田が集まり、変形な四角形を形成していた。仮換地は、東側が本件施行地区外のため不整形を修正できないが、従前地と異なり、三三区一号は北側及び西側で、同区三号は西側で幅員六メートルの区画街路に接し、池というのも、水田を池に変更しただけであるから、埋立てにより良好な宅地となるものである。また、仮換地は被告の決定した換地細則に基づき面積につき低地修正をして造成分を面積で補つてある。したがつて、原告市郎にとつて不利な仮換地ではなく、照応の原則に反していない。

なお、形状については、仮換地の地区及び従前地の地域もそうであるが、東側が本件施行地区外の土地と接していて、幅員六メートルの区画街路が縦断するように設計されているため、右区画街路と本件施行地区外の土地との間は細長い一団の仮換地とならざるを得ないわけで、やむを得ないものである。

(2) 本橋太平に対する三五区二号への仮換地指定は、不公平なものではない。

すなわち、右仮換地の従前地たる二五三一番は、(1)記載の原告市郎の一団の従前地の南側に接している土地であり、原告市郎の一団の土地につき位置を南側に移動させて一団の土地を仮換地として指定するために、二五三一番を幅員六メートルの区画街路の反対側に飛仮換地せざるを得なかつたものである。

また、三五三一番は田であつて、平坦な土地であつたが、三五区二号は、北東に傾斜した山林であつて、西北隅と西南隅の高低差が距離約三二メートルで約一〇メートル、東西の高低差が距離約一七メートルで七メートルという土地である。したがつて、三五区二号を宅地として利用するには、周囲の状況に合わせて埋立工事により平坦土地となさざるを得ず、必らずしも有利な仮換地指定ではない。また、約一〇%の減歩がなされた上、一〇八万八一六〇円の清算金の徴収となつており公平が図られている。

(四) 原告市郎の従前地(一)19の仮換地指定は、照応の原則及び公平の原則に反しない。

(1) 従前地(一)19は、道路に接しない土地であつたのに対し、仮換地は区画街路に接し、しかも三三区一号及び三号と共に一団地を形成し、利用価値が上昇しているので照応の原則に反しない。なお、仮換地が低地である点については、面積につき低地修正が行われている。

(2) 本橋勇蔵に対する仮換地は不公平なものではない。

原告らは、従前地に道路に接しない土地が多かつたのに仮換地は区画街路に囲まれた利用価値の高い土地である旨主張するが、道路に接しない土地をなくすることも、土地区画整理事業の目的であるから、右は、元来不公平の理由とはならないものである。

また、本橋勇蔵の従前地付近は、国道一七号線が設計され(二六四四番及び二六四〇番はその道路用地に当たる。)、北側には都市計画公園が設計されるなど、公共用地確保に迫られている地域であつたため、そのような仮換地となつたものである。そして、道路については、国又は都の設計によるか、又は被告の設立準備の段階で板橋区の指導の下に設計して被告の事業計画に折り込み、被告の総会の議決を得たものであつて、いずれも仮換地の割当作業に当たり被告が設計できるものではない。そして、従前地の状況、周辺の他人の従前地の状況及びその他諸条件によつて、仮換地と道路との関係が決まつてくるので、従前地と仮換地を同一の価値にできない場合も生じるが、道路との関係等による評価の不一致は清算金によつて調整されているのであり、本橋勇蔵の場合も、最終的には清算金によつて公平が図られている。

(五) 原告武雄の従前地(二)10の仮換地指定は、照応の原則及び公平の原則に反しない。

(1) 従前地(一)10の付近は、幅員三六・四メートルの国道一七号線、幅員一八メートルの都市計画補助街路第二〇三号線(以下「補助二〇三号線」という。)等公共用地が集中している上、既成宅地が多いためその移転用地の確保を優先させねばならず、そのため、畑地であつた従前地(二)10についてはやむを得ず飛仮換地をしたものである。

また、従前地(二)10は幅員約二メートルの行き止まりの道路に面していたが、仮換地は幅員六メートルの区画街路の角地に位置しているので、利用価値が上昇している。また、墓地も区画街路を隔てての存在であり、かつ、南側であるから、日照等の面で必らずしも不利ではない。低地である点も面積につき低地修正をしてあり、全体として照応の原則に反しない。

(2) 本橋助興の三七区四号への仮換地は不公平なものではない。

すなわち、本橋助興の二四八八番(宅地、九三五・五三平方メートル)は、二九区四号と三七区四号に分割されて仮換地されているが、右二四八八番全体についてみると、五・四五%の減歩がされており増仮換地ではない。

(3) 本橋助興の二九区一四号への仮換地は不公平なものではない。

右仮換地の面積は七〇〇・一九平方メートルであるのに対し、従前地の二四八三番及び二四八四番は、二八二・九七平方メートル及び三三三・八八平方メートル合計六一六・八五平方メートルであつて増仮換地となつている。しかし、右従前地は、いずれも建物の存在する既成宅地であり、その北側隣地(二四九三番四、二四八五番、二四八六番一)及び南側隣地(二四六〇番)も建物が存在する既成宅地であり、また、西側は従前も仮換地後も道路に面している。また、従前地の南側の空地部分は、これを分筆して減歩したとしても、細長い土地であつて利用価値のある独立の土地とはなり得ない。そのため、これら建物を移動させないためには、前記従前地は減歩できない状況であつた。しかるところ、従前地の面積は公簿上の面積であるが、仮換地の面積は実測によるため、いわゆる繩伸びに似た現象が生じ、計算上一三・五一%の増歩となつたものであつてやむを得ないものである。

(4) ところで、本橋助興の仮換地においては、二九区四号、三七区四号及び二九区一四号で合計一八万二二八六個の増指数仮換地となつているが、一四区五号、一七区二号、三八区五号への仮換地(従前地二六五五番外四筆)では、合計二二万六四九四個の減指数仮換地となつており、全体でも減指数のため、清算金八八万四一六〇円の交付で調整しているのである。原告の主張は、増指数の仮換地のみを抽出しての主張であるから、理由のないものである。

(六) 原告利男の従前地(三)1ないし3の仮換地指定は照応の原則及び公平の原則に反しない。

従前地(三)1ないし3の土地区画整理前の評価は、三〇段階評価で、順に、一二位、一四位及び七位であつた。これに対し、仮換地は、一六区一号が幅員一二メートルと六メートルの区画街路の角地であり、同区二号が幅員一二メートルの区画街路と、幅員三六・四メートルの国道一七号線の角地であり、将来性等も考慮すると有利な仮換地である。また、減歩率は一七・一%と低く、路面より高い点についても、高地修正という取扱いはないが、被告の負担で路面まで堀り下げる方法があり、全体として照応の原則に反しない。

(七) 山本富治に対する二四区四号への仮換地指定は不公平なものではない。

すなわち、右仮換地は、いずれも既成宅地である二四二二番ノ二及び二四二四番が現地仮換地されたものであるが、右従前地付近は国道一七号線の道路用地に近い上、周囲に既成宅地が多かつたところ、一筆の土地のうちの道路用地とならなかつた残地や、減歩すべき分を独立の仮換地とすることは、その面積や地形及び建物の位置関係からして困難な状況にあつた。そのため、右の残地や減歩すべき分を山本富治に対する仮換地として残しておかざるを得ず、やむなく増仮換地となつたものであり、評価の差は、清算金によつて調整してある。

なお、山本富治は、別に所有する二四四一番五については、区画整理の便益のため分割され、街区の異なる所へ二個の仮換地指定をされるという不利益を受けており、全体として公平が図られている。

第三証拠〈省略〉

理由

一  請求原因1及び2の事実は当事者間に争いがない。

二  まず、本件仮換地指定の無効確認請求の当否について検討する。

1  原告は、本件覚書の交換による本件負担金の額の取決めは違法であり、右の違法は本件仮換地指定の重大かつ明白な瑕疵になる旨主張するので、この点について判断する。

(一)  成立に争いのない甲第四及び第二四号証並びに乙第二号証の一、原本の存在及び成立に争いのない乙第三三号証の二及び第三四号証の三、証人小日向恒男の証言により成立の認められる乙第二〇及び第二一号証並びに第二二号証の一ないし三、原告小日向市郎本人尋問の結果により成立の認められる甲第二五号証・証人田中鶴三及び同小日向恒男の各証言、原告小日向市郎本人尋問の結果並びに被告代表尋問の結果を総合すれば、次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない

(1) 被告は、定款及び事業計画の作成を経て、昭和四〇年一二月七日東京都知事によつて設立認可された土地区画整理組合である。

(2) 本件施行区内には、昭和三八年六月一〇日建設大臣により道路区域決定のなされた都市計画街路たる国道一七号線の道路予定地約二万六〇〇〇平方メートルが存する。本件事業は、減歩によつて国道一七号線の道路用地を生み出し、これを基幹として区画街路を整備し、宅地開発を行おうとするものであり、被告の定款は、費用に充てるべき収入金の一として「公共施設管理者負担金」を掲げ、事業計画は、事業目的として「宅地開発を主とし、都市計画補助街路二〇三号及び大宮国道(国道一七号線のこと)建設に関連する区画街路の整備改善をはかる」ことを掲げ、資金計画の中に、国道一七号線に係る公共施設管理者負担金(本件負担金)として、二億二〇七四万円を計上していた。

(3) 被告は、昭和四〇年一二月一六日、設立総会を開いて役員を選出し、また、法三六条の規定に基づき総会に代わる総代会を設けた。被告は、その後、本件負担金の増額と細目等について建設大臣と折衡を続け、一応の成案を得、昭和四二年一二月二六日の総代会において右案についての説明をした上、昭和四三年一月一一日、建設大臣との間で「一般国道一七号線改築工事に係る大門土地区画整理事業の費用負担に関する覚書」(本件覚書)を取り交わした。本件覚書には、国道一七号線改築工事施行者建設大臣は、「土地区画整理法第一一九条の二に規定する公共施設管理者の負担金として五億八九二六万五〇〇〇円」を被告に対して負担すること、右「金額は、物価の変動その他特別の事情がある場合においては……協議して変更することができる」こと、前記「改築工事に必要な道路用地は、……換地処分の公告の日の翌日において国の所有に帰属するものとする。」こと等が記載されていた(被告が昭和四三年一月一一日本件負担金の額を五億八九二六万五〇〇〇円とする本件覚書を取り交わしたことは当事者間に争いがない。)。

(4) 被告は、昭和四三年三月二二日の第四回総代会において、本件覚書に従つて、事業計画中の本件負担金の額等を変更することを議決し、その後、東京都知事は、右事業計画の変更を認可した。

(5) 本件負担金の額については、その後にも、被告と建設大臣間の協議により何度か若干の増額改訂が行われた。

(二)  法一一九条の二の公共施設管理者負担金の制度は、土地区画整理事業に伴い、主として施行地区外の住民が利用する大規模・広域的な公共施設の用地が造成される場合、右用地の取得ないし造成の費用を施行地区内の組合員にのみ負担させるのは不合理であり、公共施設管理者は他の法律で当該公共施設の新設又は変更に関する事業を行うものとされており、土地区画整理事業の施行者は実質上かかる工事を代行する関係にあるから、公共施設管理者に土地区画整理事業の費用の全部又は一部を負担させるのが公平妥当であるため設けられた制度であると解される。そうとするれば、法一一九条の二は、同条の負担金を求め得る場合について「幹線街路その他の重要な公共施設で政令で定めるものの用に供する土地の造成を主たる目的とする土地区画整理事業を施行する場合」と規定しているが、右の「主たる目的」を狭く解すべきではなく、減歩により同条の定める土地を生み出す土地区画整理事業はすべて一一九条の二に規定する土地区画整理事業に当たると解するのが相当である。

しかるところ、国道一七号線は、令六四条の二第一号(都市計画において定められた幹線街路)の規定により、法一一九条の二第一項にいう「重要な公共施設で政令に定めるもの」に該当し、また、(一)で認定のとおり、本件事業は国道一七号線の道路用地を生み出すことを目的に含んでいるから、本件事業は法一一九条の二の適用を受ける事業というべきである。したがつて、被告は、国道一七号線の管理者である建設大臣に対し、本件事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めることができる。

ところで、公共施設管理者負担金の負担請求の手続について、法一一九条の二第二項は、「負担することを求めようとする場合においては、あらかじめ、当該公共施設管理者と協議し、その者が負担すべき費用の額及び負担の方法を事業計画において定めておかなければならない。」と規定しており、公共施設管理者の負担すべき費用の額及び負担の方法を変更する場合にも、あらかじめ、公共施設管理者と協議し、総会又は総代会の議決により事業計画を変更し、都道府県知事の認可を受けなければならないと解される(法三一条、三六条及び三九条)。

前記認定事実によれば、被告は、当初の事業計画において、国道一七号線の管理者である建設大臣の負担金(本件負担金)の額を二億二〇七四万円と定めていたが、建設大臣との間で、本件負担金の額の増額について協議し、総代会における説明を経た上で本件覚書を交換し、本件負担金の額を五億八九二六万五〇〇〇円に増額することを取り決め、これに伴い昭和四三年三月二二日の総代会の議決により事業計画を変更し、事業計画の変更について東京都知事の認可を受けたものである。

そうだとすれば、本件覚書の交換による本件負担金の額の取決め及びこれに伴う一連の手続は、法の定めるところに従い、公共施設管理者である建設大臣の負担すべき費用の額を増額変更したもので、何ら違法はない。

(三)  原告らは、本件負担金に関する事項は、法一五条五号の規定する「費用の分担に関する事項」に当たり、定款の記載事項であるから、本件覚書の交換による本件負担金の額の取決めに当たつては定款変更のための総会の特別議決が必要であると主張し、また、法三一条四号(経費の収支予算)、五号(予算をもつて定めるものを除く外、組合の負担となるべき契約)又は九号(保留地の処分方法)の規定の類推適用によつても、本件負担金の額の取決めには総会又は総代会の議決が必要である旨主張する。

土地区画整理組合を設立しようとする者は定款及び事業計画を定めなければならないが、定款は組合の内部組織、事業活動の大綱等、組合の組織活動の基本規則を定めるものであり、事業計画は施行地区、設計の概要、事業施行期間及び資金計画を定めるものである。法一五条五号は、定款の記載事項の一として「費用の分担に関する事項」を掲げているが、その内容としては、収入金の区分、収入金の中に組合員の負担となる賦課金及び保留地処分金が含まれる場合にはその決定基準及び方法等、費用分担の基本事項を定めれば足り、各収入金の金額まで定める必要はない。公共施設管理者負担金についていえば、これをもつて収入金の全部又は一部に充てようとする場合は、収入金の区分に公共施設管理者負担金を掲げれば足り、その額まで定めることは、定款の性質上必要ではない。法一一九条の二第二項も、公共施設管理者負担金の額及び負担方法については、事業計画においてこれを定めるべきものとしているのである。そして、右の額等を変更する場合は、事業計画を変更すれば足り、定款の変更は不要である。また、右の事業計画の変更については、総代会の議決を経れば足りるのである。(法三六条三項、三四条二項、令二条二項)。更に、公共施設管理者との右額等の変更の取決め自体は、公共施設管理者との協議によるべきことであり、事前に総会又は総代会の議決を経る必要はなく、協議成立後において事業計画変更の手続をとれば足りることである。右取決め自体につき、原告ら主張のように法三一条四号、五号及び九号の規定を適用又は類推適用すべきものと解することはできない。

前記認定のとおり、被告は、定款に収入金の一として公共施設管理者負担金を掲げ、事業計画において本件負担金の額を定め、建設大臣との間で右額の増額について協議し、協議成立に伴い本件覚書を交換し、しかる後、総代会の議決を経て事業計画を変更しているのであるから、右一連の手続に何ら違法な点はない。

(四)  また、原告らは、本件覚書の交換が組合員の検討なしに強行された旨非難するが、前述したとおり、本件負担金の額は既に当初の事業計画に掲げられていたものであり、本件覚書の交換は右額を増額変更するものにすぎず、かつ、右の変更については事業計画の変更として総代会の議決を経ているのであるから、結局、本件負担金に関する事項は、組合員の意思によつて決定されているというに支障なく、原告らの非難は失当である。

(五)  以上によれば、本件覚書の交換による本件負担金の額の取決めについて、原告らの主張する違法はない。

2  原告らは、従前地(一)ないし(三)についての仮換地予定地の通知は無効であるから、これに続く本件仮換地指定にも重大かつ明白な瑕疵がある旨主張するのでこの点について判断する。

(一)  被告が原告らに対し昭和四四年一〇月四日付け通知書で従前地(一)ないし(三)について仮換地予定地の通知をしたこと、定款七二条一項が「理事は、工事施行のため必要あるときは、仮換地の指定前においても関係権利者の同意を得て仮換地の予定地として、その全部又はその部分を指定することができる。」と定めていることは、当事者間に争いがない。

また、成立に争いのない甲第九号証及び被告代表者尋問の結果によると、右通知書には「この通知に従い昭和四四年一〇月四日より仮換地指定までの間使用収益権を移動させることになりますので御協力願います。この通知に対して不服がある場合は、昭和四四年一〇月一八日までに組合に申し出て下さい。申し出のない場合は御協力願えるものといたします。」と記載されていること、原告市郎及び原告武雄は右通知に対し指定期限までに不服を申し出たが、原告利男は不服を申し出なかつたことが認められる。

以上の事実によれば、被告の通知によつて定款七二条の仮換地予定地が一方的に指定されるものではなく、所定期限までに不服の申出がなかつた場合に初めて仮換地予定地の指定がなされるものであるところ、原告市郎及び原告武雄については、不服の申出があつたことにより仮換地予定地の指定は結局なされずに終わり、原告利男については、不服の申出がなかつたことにより、仮換地予定地の指定による同意があつたものとみなされることになつたものということができる。

そうだとすれば、被告が原告らの同意を得ることなく仮換地予定地の指定をしたとの原告らの主張は、前提を欠き失当といわなければならない。

(二)  また、仮換地予定地の指定は、法令に定めがなく、定款七二条を根拠とするものであるが、仮換地指定に先立つて、その予定地を組合員に知らせ、不服の有無を問い、組合員の意向をできるだけ仮換地指定に反映させ、事業の円滑な進行を期すため設けられたものと解される。しかし、仮換地予定地の指定は、仮換地指定の前提要件をなすものではなく、仮換地予定地の指定を経ず、あるいは仮換地予定地と異なつた仮換地指定をなすことは何ら妨げられないから、仮換地予定地の指定に瑕疵があつたとしても、その違法性は仮換地指定に承継されるものではない。

したがつて、原告らの主張はいずれにしても失当である。

3  原告らは、仮換地指定は原則として建築物等の移転又は除却の終了後になされなければならないのに、本件仮換地指定は、右の終了前に国道一七号線の道路用地内の原告らの従前地の使用収益権を奪う目的で強行されたものとして重大かつ明白な瑕疵がある旨主張するので、この点について判断する。

(一)  定款七三条が「この組合の仮換地の指定は、建築物等の移転又は除却が完了する前においても、施行地区の部分に分け又は全部について行うことができる。」と規定していること及び本件仮換地指定が従前地(一)ないし(三)上の建築物等の移転又は除却が完了していなかつた時期に行われたことは当事者間に争いがない。

(二)  しかし、右定款七三条の規定が従前地上の建築物等の移転又は除却前には原則として仮換地指定ができないことを定めていると解することはできない。また、法令上も仮換地の指定をしてから建築物等の移転又は除却をするのがむしろ原則とされている(法七七条)。

また、仮換地の指定があれば、従前地について使用収益することができなくなるが、本件仮換地指定は、弁論の全趣旨により本件施行地区全体について一斉に行われたものであることが明らかであり、原告ら主張のような目的で強行されたことをうかがわせる証拠は見当たらない。

そうすると、原告らの主張は失当といわざるを得ない。

4  次に、原告らは、三輪外三名に対する仮換地指定は同人らに不当な利益を与えるとともに、被告の理事長たる星野が私利を得るため、手続にも違反して行われたものであつて、これらは本件仮換地指定の重大かつ明白な瑕疵につながる旨主張するので、この点について判断する。

(一)  次の事実は当事者間に争いがない。

(1) 被告の組合員である三輪は二六六四番五の土地一五・九五坪、武田は同番四の土地一四・三七坪、小関は同番三の土地一一・六六坪、天野は同番二の土地一一・三〇坪をそれぞれ所有し、これら四筆の土地は地続きとなつていた。

(2) 被告理事会は、昭和四三年一〇月一八日、右土地の近くで三輪に対し二九・三三坪、武田に対し二五・四五坪、小関に対し二六・六六坪、天野に対し二一・八〇坪の仮換地予定地を指定することを決定した。

(3) 星野は、昭和四三年一一月二五日、山中電気から本件事業の施行地区内の二六四一番二の土地一二〇坪を一坪当たり六万二七〇〇円で買い受け、同月二八日受付けで所有権移転登記を受け、昭和四四年三月一三日受付で右土地を同番二及び四ないし八に分筆し、同月一九日、同番四を天野に、同番五を小関に、同番六を武田に、同番七を三輪にそれぞれ売却し、その旨の所有権移転登記をした。

(4) 被告は、昭和四六年六月二日付けの仮換地指定において、昭和四三年一〇月一八日の前記理事会決定のとおり、三輪の二六六四番五及び二六四一番七の二筆につき二九・三三坪の一仮換地、武田の二六六四番四及び二六四一番六の二筆につき二五・四五坪の一仮換地、小関の二六六四番三及び二六四一番五の二筆につき二六・六六坪の一仮換地、天野の二六六四番二及び二六四一番四の二筆につき二一・八〇坪の一仮換地をそれぞれ指定した。

(二)  成立に争いのない甲第一二及び第二一号証、乙第一号証の一、乙第一五及び一六号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第一〇及び第一一号証、被告代表者尋問の結果により成立の認められる乙第一四号証、同尋問の結果により昭和四三年一二月ころ被告が三輪の建物の移転工事を撮影した写真と認められる乙第一三号証の一及び二、証人本橋太郎の証言、原告小日向市郎本人尋問の結果、被告代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる的確な証拠はない。

(1) 三輪外三名は、いずれも建売住宅を買つて二六六四番二ないし五に居住していたものであるが、右土地はいずれも面積が狭小であつて、敷地のほぼ一杯に木造建物が建つていて空地がほとんどない状態であつた。

(2) そして、二六六四番二ないし五は、本件事業により新設される区画街路のほぼ角地に位置することとなつたが、区画街路が従前の地表より約五メートルも低く設置されることになつたため、区画街路を建設するためにも、また、二六六四番二ないし五の宅地としての機能を維持するためにも、二六六四番二ないし五も区画街路と同じ高さまで堀り下げる必要があつた。したがつて、三輪外三名の各建物をいつたん他に移動し、二六六四番二ないし五を堀り下げた上、そこに右各建物を下ろす工事が必要になるが、右土地が狭小な上、敷地一杯に四戸の木造建物が建てられているため、右工事は技術的に極めて困難であつた。一方、昭和四三年当時前記区画街路の建設工事が緊急を要し、被告としては三輪外三名の各建物を早急に移動させる必要に迫られていた。三輪外三名は、このような状況の中で、被告に対し、増換地の交付を申し入れていた。

(3) 被告は、原則として増換地は行わないことにしているため、三輪外三名の問題の処理に苦慮したが、昭和四三年一〇月一八日の第一五回理事会において、星野が本件施行地区内の自己の所有地を一部三輪外三名に譲渡することを申し出たため、星野の譲渡土地と二六六四番二ないし五に対し(一)(2)記載の仮換地予定地を一括指定することを決定し、そこに三輪外三名の各建物を移動させ、工事の進捗を図ることを決定した。

(4) 右仮換地予定地は、二六六四番二ないし五より三輪分が一三・三八坪、武田分が一一・〇八坪、小関分が一五・〇〇坪、天野分が一〇・五〇坪増えているところ、昭和四三年一一月五日、三輪外三名に対し、星野は、右増加分に対応する本件施行地区内の自己所有地を、三輪については右坪数に一一万円を乗じた価額で、他の三名については右坪数に一〇万円を乗じた価額で譲渡することを約し、被告は、右仮換地予定地を指定することを約した。ところで、星野の所有地は将来減歩を受けるべき土地であるところ、右の段階で分筆及び三輪外三名に対する所有権移転登記を経由すれば、三輪外三名は過小宅地の所有者で減歩を受けないため、結果的に星野が譲渡分については減歩を受けないことになり、不公平になるところから、星野の減歩率が確定した後に、減歩後の面積が右坪数に合致することとなる面積を計算し、当該面積の土地につき分筆及び所有権移転登記を経由することとし、右契約の段階では譲渡土地及び面積を特定しないこととした。

(5) 右契約の後、原告市郎外一〇数名の者から右契約内容につき所有権移転登記を経由しないのはおかしいとの疑義が出されたため、昭和四四年三月ころ星野から三輪外三名に対し、ほぼ(4)の坪数の土地につき所有権移転登記を経由し、右土地につき減歩をまぬがれた分は星野において仮清算金を支払い調整することとなつた。そして、星野は、従来から本件施行地区内に所有地を有していたが、これとは別に(一)(3)記載のとおり山中電気から二六四一番二を購入したので、この土地につき(一)(3)記載のとおりの分筆及び所有権移転登記を行つた。

(6) 右の経緯の下に昭和四三年一二月から昭和四四年一月初めころに三輪外三名の建物の移転が行われ、そのころ、前記道路工事及び宅地の堀下工事が施行された。また、被告は、昭和四三年一〇月一八日の理事会決定のとおり、三輪外三名に対する仮換地予定地の指定及び(一)(4)記載の仮換地指定を行い、星野は前記仮清算金を支払つた。

(三)  以上の事実を前提に、原告らの主張について検討するに、まず、原告らは、三輪外三名に対する仮換地の指定は星野の私腹を肥やすためのものである旨主張する。しかし、三輪外三名が従来から所有する二六六四番二ないし五と星野から譲渡を受けた二六四一番四ないし七につき一括して仮換地指定を行うことになつたのは、三輪外三名の建物移転工事上の技術的要請と本件事業の円滑な進捗のためであつて、星野に利得させる目的のものとは到底いえない。右仮換地指定の目的がこのように正当なものである以上、星野が右譲渡により結果的に利を得たとしても、右仮換地指定を違法ならしめるものとはいえない。

次に、原告らは、三輪外三名に対する仮換地指定は同人らに著しく有利で公平を欠く旨主張する。確かに、右仮換地指定は、一括指定である上、減歩もない点において有利なものということができるが、一括指定は建物移転工事の技術上の要請に基づくもので、本件事業の工事の円滑な進捗のため必要なものであつたこと、右仮換地は一〇〇平方メートルに満たない過小宅地であるところ、これにつき減歩をしないことは過小宅地を保護する法の精神にも合致し(法九一条)、被告の換地規程(成立に争いのない甲第五号証)一五条四項も「既成宅地で従前の所有地積が一〇〇平方米未満のものについてはなるべく従前の地積を交付する。」と規定していること、更に、星野が三輪外三名に譲渡した二六四一番四ないし七については、本来減歩を受ける分につき星野において仮清算金を支払つていることを考慮すれば、右仮換地指定をもつて違法ないし不公平なものということはできない。

また、原告らは、被告の定款は工事施行のため必要があるときにのみ仮換地予定地の指定を行うことを認めているところ、三輪外三名に対する仮換地予定地の指定決定は換地処分のためのものであり、かつ、換地図も作成されていない段階で行われたものであるから、違法である旨主張する。しかし、被告の理事会が三輪外三名に対する仮換地予定地を最終的な換地とすることを前提としていたとしても、右仮換地予定地の指定決定が工事施行のための必要に基づいたものであることは明らかであり、また、右仮換地予定地の指定決定が関係者の同意を前提とするものであり、かつ、換地処分を法的に拘束するものでない以上、たとえ換地図作成前のものであつても違法ということはできない。

したがつて、原告らの主張はいずれも失当である。

5  以上のように、本件仮換地指定には、原告らが無効原因として主張する違法はないから、その無効確認を求める原告らの主張は失当としてこれを棄却することとする。

三  次に、本件通知及び照会の無効等確認の訴えの適法性について判断する。

原告市郎及び原告武雄は、別紙物件目録記載(四)1及び2の土地上の建築物等についての法七七条二項の規定に基づく通知及び照会の無効等確認を求めるものである。法七七条二項は、「施行者は、前項の規定により建築物等を移転し、又は除却しようとする場合においては、相当の期限を定め、その期限後においてはこれを移転し、又は除却する旨をその建築物等の所有者及び占有者に対し通知するとともに、その期限までに自ら移転し、又は除却する意思の有無をその所有者に対し照会しなければならない。」と定めており、また、同条六項前段は「施行者は、第二項の規定により建築物等の所有者に通知した期限後……においては、何時でも自ら建築物等を移転し、若しくは除却し、又はその命じた者若しくは委任した者に建築物等を移転させ、若しくは除却させることができる。」と定めている。してみれば、本件通知及び照会は、別紙物件目録記載(四)1及び2の土地上の建築物等の移転又は除却を執行する前提要件となるものである。

ところで、無効等確認の訴えは、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者に限り原告適格が認められる(行政事件訴訟法三六条)。しかるところ、被告代表者本人尋問の結果により成立の認められる乙第一一及び第一二号証の各一及び二、原告小日向市郎本人尋問の結果、被告代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件通知及び照会に係る別紙物件目録記載(四)1及び2の土地上の建築物等については、昭和五〇年一〇月二八日付けで板橋区長の認可を得た上、同年一一月一二日にその移転の執行が完了し、現在においては、原告市郎又は原告武雄が本件通知及び照会に続く処分により損害を受けるおそれの生ずる余地のないことが認められ、この認定に反する証拠はない。また、右執行に関する原状回復又は損害賠償の訴えをなすために、本件通知及び照会の無効等の確認を訴求しなければならないという関係にもなく、他に無効等確認を求めるにつき法律上の利益を有すると認めることもできない。

そうすると、原告市郎及び原告武雄は、本件通知及び照会の無効等確認を訴求する原告適格を有しないというべきである(最高裁判所昭和四三年一〇月二九日第三小法廷判決・裁判集民事九二号七一五ページ参照)。したがつて、右訴えはいずれも不適法であるから、これを却下することとする。

四  最後に、原告らの予備的請求について検討する。

1  原告市郎は被告が昭和四六年六月二日付けでした従前地(一)1ないし3、9ないし15及び19についての仮換地指定処分、原告武雄は被告が同日付けでした従前地(二)10についての仮換地指定処分の各取消しを請求している。

本件記録によれば、原告市郎及び原告武雄が右各取消しの訴えを提起したのは昭和五〇年一二月一日である。そして、出訴期間の遵守につき、同原告らは、右各仮換地指定処分につき建設大臣に対し昭和四八年二月五日付けで再審査請求を申し立て、昭和五〇年九月二〇日付けで却下の裁決を受けたと主張している。行政事件訴訟法一四条四項は、処分につき審査請求をすることができる場合において審査請求があつたときは、これに対する裁決があつたことを知つた日から三か月の出訴期間を起算する旨規定しているが、右の審査請求は適法なものでなければならない。ところが、成立に争いのない乙第一七号証によると、同原告らの再審査請求は行政不服審査法五三条の再審査請求期間を徒過した不適法なものとして右のとおり却下の裁決を受けていることが明らかである。したがつて、右却下の裁決があつたとことを知つた日から三か月の出訴期間を起算することはできず、右訴えの提起は出訴期間徒過後のもので、不適法といわざるを得ない。なお、同原告らは、再審査請求が適法なもので、これを却下した建設大臣の裁決が誤りであることについては何ら主張立証しないが、前提乙第一七号証によると、同原告らは右仮換地指定処分に対し東京都知事に審査請求をなし、同知事の棄却裁決が昭和四七年一二月二八日同原告らの審査請求代理人であつた下山田行雄弁護士の許に送達されたところ、同原告らは昭和四八年二月五日付けで建設大臣に再審査請求をしたこと、同原告らの再審査請求代理人岡部琢郎弁護士は弁護士は一二月二八日から翌年一月九日までは事務所を休みにする習慣があり、下山田行雄弁護士が現実に審査裁決のあつたことを知つたのは昭和四八年一月一九日である旨主張したものの、建設大臣は裁決書が同弁護士の許に送達され、同弁護士の了知し得べき状態におかれた日をもつて裁決があつたことを知つた日と解すべきであると判断し、再審査請求代理人の主張を退けたことが認められ、当裁判所も建設大臣の判断は正当と考える。

よつて、原告市郎及び原告武雄の右取消請求の訴えは不適法というべきであるからこれを却下することとする。

なお、原告利男は被告が昭和四六年一一月二〇日付けの法一三三条の公告をもつてした従前地(三)についての仮換地指定処分の取消しを請求しているところ、同原告の訴えは適法である。そこで、同原告が取消事由として主張する照応の原則違反について判断することになるが、原告市郎及び原告武雄が取消し事由として主張する照応の原則違反についても念のため触れておくこととする。

2  仮換地を指定する場合においては、仮換地及び従前地の位置・地積・土質・水利・利用状況・環境等の諸事情を総合的に勘案し、仮換地と従前地とがほぼ同一条件になるように指定しなければならない(法九八条二項、八九条一項)(照応の原則)。

また、仮換地指定処分は、多数の者の間でなされる行政処分であるから、他の者に対する仮換地との関係で不公平な結果の生じないよう配慮する必要がある(公平の原則)。ただし、土地区画整理事業は広範囲な土地について行われるもので、関係者も多く、建物の移転等の制約があるため、完全な平等を望むことは困難であり、法も、ある程度の不均衡が生ずることはやむを得ないものとして許容し、その不均衡は金銭をもつて清算すべきものとしているから(法一〇二条一項、九四条)、仮換地指定処分が公平の原則に反し違法というためには、施行者が合理的理由もないのに特定の者に対し故意に不利益な処分をした場合か、又は当該処分が特定の者にとつてのみ著しく不利益なものである場合であることを要するというべきである。

そして、右の照応の原則及び公平の原則は個々の土地ごとに個別的に満たされるのが最も望ましいことではあるが、土地区画整理事業による利益、不利益は、結局各組合員単位で生じるものであり、また、区画整理事業は分散錯綜した各土地を統合整理するものであつて、技術的に種々の制約、困難を伴うものであるから、同一人が複数の土地を所有している場合において個別的均衡を保ち難いときは、これらの土地に対する数個の仮換地を総合し、全体として均衡を保つことも許されるものというべきである。

3  前提甲第四、第五及び第九号証並びに乙第一及び第二号証の各一、成立に争いのない甲第七、第八、第一三及び第一四号証、甲第二七ないし第三八号証、甲第四一号証の一及び二、乙第一及び第二号証の各二、乙第一八号証、乙第二八号証の一及び二並びに乙第三〇号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第三一号証、証人本橋みよ子の証言により原告ら主張の写真と認められる甲第一八号証、原告小日向市郎本人尋問の結果により原告ら主張の写真と認められる甲第二二号証、原告本橋武雄本人尋問の結果により原告ら主張の写真と認められる甲第三九号証の一ないし四、証人小日向恒男の証言により成立の認められる乙第二三号証、原本の存在及び成立の認められる乙第二四号証並びに被告主張の写真と認められる乙第二六号証の一ないし三、被告主張の写真であることにつき争いのない乙第二五号証の一ないし五、乙第二九号証の一ないし一二及び乙第三二号証、被告代表者尋問の結果により被告主張の写真と認められる乙第二七号証、証人本橋太郎、同田中鶴三、同本橋みよ子及び同小日向恒男の各証言、原告小日向市郎及び同本橋武雄の各本人尋問の結果、被告代表者尋問の結果、検証の結果、弁論の全趣旨並びに当事者間に争いのない事実を総合すれば、次のとおり判断することができ、この判断を覆すに足りる証拠はない。

(一)  本件事業は、全域にわたつて緑地地区の指定を受けている本件施行地区の宅地開発を主たる目的とし、事業完了後には住居地域の指定を受けることを予定し、また、本件施行地区内の都市計画街路である国道一七号線及び補助二〇三号線の道路用地を減歩によつて生み出すこととしていた。ところが、本件施行地区は、東西が低地でその中央部が台地となつており、起伏が激しく、高低差が一〇ないし二〇メートル以上もある上、台地部に普通住宅及び農家が点在する程度で既成宅地の割合が小さく、大部分が田、畑又は山林であつた。また、道路も狭い農道が多く、これを原位置のまま整備することは不可能であり、かつ、公園も存在しなかつた。そのため、本件事業においては、大規模な土地の区画及び形質の変更等の工事が必要であり、また、事業計画においても、新設される国道一七号線及び補助二〇三号線を基幹として多数の幅員四、六、八又は一二メートルの区画街路が設計されていた。すなわち、本件施行地区を北西から南東へ斜めに縦断する形で幅員三六・四メートルの国道一七号線が設置され、南東の隅において幅員一八メートルの補助二〇三号線がこれと交差し、また、北部にはほぼ東西に本件施行地区を横切る形で幅員一二メートルの区画街路が新設されることになつていたほか、北東部には相当規模の都市計画公園が設置される等の大規模な環境の整備、改善が計画され、そのため多数の工事と相当面積の公共用地が新たに必要とされていた。そのため、本件事業においては、土地の利用価値の大幅な向上が見込み得る反面、各組合員の地積のかなりの減少は避けられない事情にあつた。

本件事業の換地の基準について、定款七一条は「この組合の換地は、事業計画の内容として定めた換地設計の方針に従い、第七十条の規定による従前の宅地及び権利部分の地積を標準として行う。理事は換地について、あらかじめ総代会の同意を得て定める換地規程に基き処理するものとする。」と定め、換地規定四条は「換地は、事業計画の内容として定めた換地設計の方針に従い、なるべく原位置に近い位置に交付するものとする。原位置に公共用地又は保留地の指定があるときはその付近地若しくはこれに相当する換地を交付する。建物の移築、その他特別の事情がある場合は、原位置を離れ換地することができる。」、同八条は「角地の換地を交付するときは、次の順位によるものとする。但し、従前の土地が道路に接する面の長さ又は甚しく等位の異る場合等の事由があるときはこの限りでない。1道路中心線の交点を含む従前の土地。2道路中心線の交点から従前の土地の筆界までの距離が近い土地。」、同九条は「換地は従前の土地一筆に対して一筆を交付するが数筆にわけ又は従前の土地数筆を合筆することができる。前項の場合において、所有権以外の権利がある土地については合筆を行わない。」とそれぞれ定めている。

被告は、昭和四四年初めころ、土地区画整理の専門業者である国土振興株式会社に対し、換地の割込み作業を委託した。同社は、同年九月ころ、仮換地予定地の割込みを表示した図面等を被告に提出した。被告は、右換地予定地の割込みについて、事業計画、定款、換地規程等に照らしてその妥当性を吟味したが、特段の問題はないと判断して同社の割込案のとおり仮換地予定地の通知をなした。その後、被告は、一部組合員からの不服申出に基づいて仮換地予定地を一部変更し、土地の評価、面積の計算等を正確化した上、仮換地予定地の通知のとおりに昭和四六年六月二日付け(公告によりなした分はこれより遅れる。)で本件施行地区全部につき仮換地指定をなした。右仮換地指定による平均減歩率は一九・一%である。

また、本件施行地区の土地の評価については、評価員会が中心となつて、評価基準に基づき全部の土地につき各筆ごとに土地区画整理開始時と土地区画整理完了時の評価額を算出し、理事会に諮つた上で総代会の同意を得て決定した。右評価に当たつては、従前地及び仮換地の各評定指数を算出し、従前地の総評定指数一億八八四三万一一二一個に対する仮換地の総評定指数一億八八九五万八五五〇個の割合(一・〇〇二七九九)を算出し、従前地の評定指数に右一・〇〇二七九九を乗じて得られた比例指数(これに二〇円を乗じたものが従前地の権利価額である。)を計算し、これと仮換地の評定指数(これに二〇円を乗じたものが仮換地の権利価額である。)を対比することとした。そして、従前地の比例指数と仮換地の評定指数との差に指数一個当たり二〇円を乗じて得られた金額を仮清算金として交付又は徴収することとした。

従前地(一)ないし(三)及びこれらの仮換地について、右方法に従つて被告が算出した比例指数、評価指数、その差、仮清算金の額及び減歩率は別表一のとおりである。また、原告ら並びに原告らが不公平を指摘する本橋太郎、田中鶴三、本橋太平、本橋勇蔵、本橋助興及び山本富次の従前地及び仮換地について、各人ごとに合計した地積、比例指数、評定指数、減歩率等をまとめると別表二のとおりである。

(二)  原告市郎の従前地(一)1ないし3に対する仮換地は二三区九号である。

二三区九号は、従前地(一)1及び2の関係では現地仮換地、従前地(一)3の関係では飛仮換地である。従前地(一)1及び2は、一団の不整形な土地であつて、角地といつても南側で幅員約一・八メートルの道路に、西側で幅員約三・六メートルの道路に面していたにすぎなかつた。従前地(一)3は、二五七七番一及び二並びに二五七八番と共に一団の土地を形成していたが、不整形な傾斜地で低評価地であつた(二五七七番一及び二並びに二五七八番の一平方メートル当たりの比例指数は六六二個)。これに対し、二三区九号は、従前地(一)及び2よりも整形で、高評価地である(一平方メートル当たりの評価指数は九五八個)。そして、仮清算金は一九七万九五六〇円の交付となつている。従前地(一)3につき飛仮換地となつたのは、その付近に都市計画公園が造成される予定で、右従前地の約半分がその敷地に該当し、更に、付近に幅員一二メートル及び六メートルの区画街路も新設されるため、近接地への仮換地の割当ても窮屈であつたためである。しかし、従前地(一)3は既成宅地ではなく、高評価地区への、しかも一括の仮換地指定であつて、原告市郎にとつてむしろ有利なものである。二三区九号は、角地ではないが、長辺で区画街路に接しており、また従前地(一)1及び2は換地規程八条に基づく角地交付の優先順位を有する土地ではなかつた。二三区九号は北東部にくぼみを有するが、既成宅地上の建物のためであつてやむを得ないものである。減歩率は二七・〇二%とやや高いが、従前地が畑であること、従前地(一)3については高評価地への仮換地指定であること、原告市郎の全体の減歩率は一四・八一%と平均を下回つていることからすれば、不合理とはいえない。

以上の諸事情を総合勘案すれば、従前地(一)1ないし3と二三区九号とはほぼ同一条件のものということができ、原告市郎の全体の減歩率をも併せ考えれば、右仮換地指定は照応の原則に反するものではないというべきである。

原告市郎は、右仮換地指定は被告の設計担当理事本橋太郎に対する仮換地三九区四号の指定に比べて不公平であると主張する。本橋太郎に対する仮換地の指定は、従前地一三筆に対し三九区三号、四号及び五号が指定されているところ、従前地一三筆中三六七四番五及び二六〇五番二を除く一一筆は一団の土地を形成し、三九区三号、四号及び五号も一団の土地を形成しているから、その中から三九区四号のみを取り出しての比較は相当でなく、全体として比較すべきである。しかるところ、三九区三号、四号及び五号は三方を区画街路で囲まれた角地であるが、右の従前地一一筆に対する関係で現地換地であり、角地の交付につき不合理はない。二六七四番五及び二六〇五番二に対する関係では飛仮換地であるが、二六七四番五は国道一七号線の道路用地内の土地で、しかも面積が一一二・四〇平方メートルで減歩により過小宅地となるものであり、二六〇五番二は都市計画公園用地内の土地であつて、一括飛仮換地の指定をすることに不合理はない。そして、本橋太郎の全体の減歩率は二六・八六%と高く、しかも仮清算金を四九万七六〇〇円徴収されるのであるから、原告市郎に対する右仮換地の指定との間に不均衡が存するものとはいえない。

原告市郎は、前記仮換地指定は被告の監事田中鶴三に対する仮換地四七区二号の指定と比べても不公平であると主張する。田中鶴三に対する仮換地の指定は、従前地一三筆(二四三九番を除く。)に対し四七区一号、二号、三号及び五号が指定されているところ、従前地一三筆中二五五三番及び二五五五番を除く一一筆は一団の土地を形成し、四七区一号、二号、三号及ぎ五号も一団の土地を形成しているから、その中から四七区三号のみを取り出しての比較は相当でなく、全体として比較すべきである。しかるところ、四七区一号、二号及び五号は、従前地一一筆の中にほぼ収まるもので、実質的には現地仮換地であり、特段に有利なものとはいえない。原告市郎の指摘する四七区二号も、田中鶴三の建物が存在し、これを同人に交付することは当然のことといえる。四七区二号は、形式的には二五五三番及び二五五五番を従前地とし、飛仮換地であるが、右従前地一一筆が区画街路の設置により高評価地となり、その減歩率が高くなるため、その減歩分を二五五三番及び二五五五番の仮換地に充てようとする趣旨のもので、既成宅地保護の精神に合致し、また、二五五三番及び二五五五番は国道一七号線の用地に近く、現地仮換地が困難であることに照らせば、右仮換地指定の合理性を肯定することができる。なお、田中鶴三の残りの従前地二四三九番については、二区二号が仮換地として指定されているところ、二四三九番が南側でだけ道路に面していたのに対し、二区二号は北東及び南西側の二面で区画街路に面し、その減歩率も四・三七%と低いが、右は現地仮換地であり、仮清算金も一二五万〇二八〇円の徴収となつている。そして、田中鶴三の全体の減歩率は一九・五一%であり、仮清算金は一六万円の徴収であつて、同人に対する仮換地指定と原告市郎に対する前記仮換地指定との間に特段の不均衡が存するとはいえない。

(三)  原告市郎の従前地(一)9ないし15に対する仮換地は三三区一号及び三号である。

従前地(一)9ないし15は、一団の土地を形成していたが、本件施行地区のほぼ東端に位置し、三方を幅員約〇・九メートル又は約一・八メートルの水路に囲まれた湿地であつて、道路との関係も、一部右水路をはさんで農道に面している部分がある程度で、湿田又は畑として利用されていたもので、総合的利用価値は低く一平方メートル当たりの比例指数も約五七一ないし五八四個にすぎなかつた。そして、右従前地には都市計画公園、幅員六メートルの区画街路及び幅員一二メートルの区画街路が配置されるため、現地仮換地は不可能で、かつ、北側は公園用地、東側は本件施行地区外、西側は山林であるため、南側に位置及び環境の照応する仮換地を求めざるを得ない事情にあつた。仮換地の三三区一号及び三号は、一団の土地ではあるが、細長く、東側が不整形であつて、本件施行地区外の高台(最大約二〇メートル高い。)と接しており、西側の約六、七メートル高い区画街路とにはさまれた谷間の湿地であつて、一平方メートル当たり評定指数は六一六ないし六五二個である。しかし右仮換地は、右従前地の南側に一部重なつており、位置及び環境の面ではほぼ同一といえる。そして、埋立てを行えば、従前同様畑として利用することが可能であり、また、西側で幅員六メートルの区画街路に長く接しており、北西角は角地になつて、宅地としての利用も十分可能である。評定指数も低いとはいえ、従前地の比例指数よりは高く、面積も、全体で三・〇九%の増歩になつており、低地である点は面積で補填されている。

以上の諸事情を総合勘案すれば、従前地(一)9ないし15と三三区一号及び三号とはほぼ同一条件のものということができ、右仮換地指定は照応の原則に反するものではないというべきである。

原告市郎は、右仮換地指定は被告の総代本橋太平に対する仮換地三五区の一号、二号及び七号並びに四七区四号の指定に比べて不公平であると主張する。同原告主張のように、三三区は本件施行地区の東端に位置し、必ずしも良好な土地ではないところ、三三区内に存在していた本橋太平の従前地である二五二七番及び二五二八番は三五区一号へ、二五三一番は三五区二号へ、二五三〇番は三五区七号へ、二四九九番は四七区四号へ、それぞれ飛仮換地されている。しかし、二五二七番、二五二八番、二五三〇番及び二五三一番は、原告市郎の前記従前地につきその位置を南にずらせて仮換地する必要上、目白押しの形で三三区外にその仮換地を求めざるを得なかつたものである。そして、仮換地先の三五区一号、二号及び七号並びに四七区四号は、もともと本橋太平の所有地の一部であつたものであり、その減歩分を右二五二七番等の仮換地に充当したというにすぎない。また、右仮換地は傾斜の強い山林地帯で、宅地とするためにはかなりの造成を必要とし、右従前地に比し特段に有利なものとはいえない。減歩率は、三五区一号が約三六・一二%、三五区二号が約九・七四%、三五区七号が約三四・四六%、四七区四号が約二七・九五%である。なお、本橋太平の全体の減歩率は二四・三〇%である。したがつて、右一連の仮換地指定が原告市郎に故意に不利益を与えるためとか、本橋太平に不当な利益を与えるためなされたものとは到底いえず、両者の右仮換地に著しい不均衡が存するものともいえない。

次に、原告市郎は、同原告の従前地(一)12ないし15は四七区三号の東北部に位置するところ、現地換地の原則及び角地の交付順位からして、四七区三号の東北部を右従前地の仮換地として指定すべきであつたと主張する。四七区三号は、田中鶴三の従前地二五四四番一、原告市郎の右従前地等にまたがつて存在するところ、四七区三号を分割し、その一を同原告に対する仮換地とすることは、現地換地の原則及び角地の交付順位からして理由のないことではない。しかし、四七区三号の中で占める割合は、田中鶴三の二五四四番一の方が原告市郎の右従前地より大きい。そして、前記のとおり、田中鶴三の前記従前地一一筆は一団の土地を成していたところ、これに対し一団の土地を成す四七区一号、二号、三号及び五号を仮換地として指定したもので、従前地の位置を全体として東側にずらす形の仮換地指定となつている。その結果、目白押しの形で原告市郎の従前地(一)9ないし15が全体に南側に移動させられている。この一連の仮換地指定は、一団の従前地をいたずらに分断することなく、全体を目白押しの形で移動させ、一団の仮換地を交付しようとするものであり、それなりの合理性を有するものである。したがつて、右一連の仮換地指定は、被告の裁量の範囲に属するものであり、違法性を有するものとは到底いえない。

(四)  原告市郎の従前地(一)19に対する仮換地は三三区一二号である。

右従前地は、高台に位置していたが、道路に接しておらず、隣接する墓地の中を通らなければならない不整形地であり、土地区画整理によつても道路に接しさせることの困難な山林であつて、一平方メートル当たりの比例指数は約四六二個にすぎなかつた。仮換地の三三区一二号は、必ずしも良好な土地といえないにしても、原告市郎の仮換地である三三区一号及び三号に接して一団の土地を形成し、西側で区画街路に面し、宅地化の可能な土地であり、一平方メートル当たり評定指数は六五二個であつて、減歩率は二七・六一%ではあるが、一三一〇個の増指数となつている。

右の利用価値の増大を考慮すれば、従前地(一)19と三三区一二号とはほぼ同一条件のものということができ、右仮換地指定は照応の原則に反するものではないというべきである。

原告市郎は、右仮換地指定は、本橋太平の従前地二五三〇番に対する仮換地三五区七号の指定に比べて不公平であると主張する。二五三〇番は道路に接しておらず、一平方メートル当たりの比例指数も約五七個と低い土地であるが、前記のとおり、三五区七号はもともと本橋太平の所有地の一部であつて、右有所地の減歩分を二五三〇番の仮換地としたという関係にあり、同人に不当な利益を与えるための仮換地指定ではない。しかも、三五区七号は、相当に傾斜の強い地形であり、減歩率も約三四・四六%に及び、二六〇二個の減指数になつている。したがつて、原告市郎に対する右仮換地の指定が本橋太平に対するものに比し不公平なものということはできない。

原告市郎は、前記仮換地指定は被告の評価員本橋勇蔵に対する仮換地指定と比べても不公平であると主張する。本橋勇蔵の従前地一一筆の中には、同原告指摘のように道路に接しない土地が六筆含まれてはいるものの、右従前地一一筆は全体として一団の土地を形成しており、これに対する仮換地指定を、孤立して存在する同原告の従前地(一)19の仮換地指定と比較することはできない。そして、本橋勇蔵の右従前地は、その中に区画街路が認置され、国道一七号線及び都市計画公園の用地にも一部かかるため、三か所に分断して仮換地が指定される結果となつており、減歩率も全体で二四・四一%と高く、仮清算金四六万四六二〇円の徴収となつている。したがつて、本橋勇蔵に対する右仮換地指定との比較において、原告市郎に対する前記仮換地の指定を不公平なものということもできない。

(五)  原告武雄の従前地(二)10に対する仮換地は三七区九号である。

従前地(二)10は、同原告の居宅の地続きであつて、従前地(二)1及び5ないし9と共に一団の土地を形成していたが、従前地(二)1及び10が別の街区へ飛仮換地となつた。右一団の従前地は、国道一七号線と幅員一八メートルの補助二〇三号との交差点の近くに位置し、その一部は右各道路用地にかかつていた。そして、右各道路用地には既成宅地が多く、その住居の移転用地の確保を優先させなければならない事情にあり、右一団の従前地全部につき現地仮換地を行うことができず、畑であつた従前地(二)1及び10については飛仮換地の指定となつた。従前地(二)10は、平担地であつて、一平方メートル当たりの比例指数も約七六一個と低くはないが、幅員約一・八メートルの行き止まりの道路に面しているだけである。これに対し、三七区九号は、区画街路を隔てて南側に墓地があり、路面より約三ないし四メートル低い土地であつて接する区画街路も坂道ではあるが、幅員六メートルの区画街路に北東及び南東で接する角地であつて、埋立工事等により従前同様畑として利用することはもとより、日当たり良好な宅地としても利用できる土地である。一平方メートル当たりの評定指数も八三八個と従前地より上昇しており、減歩率も一四・三八%と低率である。

以上の諸事情、特に利用価値の増大を考慮すれば、従前地(一)10と三七区九号とはほぼ同一条件のものということができ、右仮換地指定は照応の原則に反するものではないというべきである。

原告武雄は、右仮換地指定は被告の総代本橋助興に対する仮換地三七区四号の指定に比べ不公平であると主張する。本橋助興の従前地二四八八番は二九区四号と三七区四号へ分割仮換地されており、三七区四号の関係では同原告指摘のように一一・五九%の増歩になつているが、二九区四号の関係では二一・四〇%の減歩となつており、二四八八番全体としては五・四五%の減歩になつている。また、二四八八番は、原告武雄の二四八二番よりも従前の道路との関係が良く、地目も宅地であつて、一平方メートル当たりの比例指数が約八一五個と若干高くなつている。これに対し、三七区四号は、原告武雄の同区九号よりも道路との関係が悪く、一平方メートル当たりの評定指数も八〇六個である。そして、本橋助興の全体の減歩率が一八・五三%と原告武雄の一〇・五七%より高くなつていることも考え併せると、同原告に対する右仮換地指定をもつて特に不公平なものということはできない。

また、原告武雄は、前記仮換地指定は本橋助興に対する仮換地二九区一四号の指定と比べても不公平であると主張する。二九区一四号は、本橋助興の従前地二四八三番及び二四八四番に対するものであるが、一三・五一%の増歩となつている。しかし、右仮換地指定は、従前地をほぼ原位置でそのまま現地仮換地したものにすぎず、計算上増歩となつたのは、従前地の公簿上の面積が誤まつていたためであつて、実測面積ではほとんど差が生じていない。また、減歩が行われていないが、右従前地はいずれも建物の建つている既成宅地であり、これに隣接する二四八五番、二四八六番一及び二四六〇番も既成宅地であり、これらの既成宅地上の建物を移動等しないまま、二四八三番及び二四八四番を減歩してみても、適正面積の区画街路に接する仮換地を設計するのは困難である。そして、既成宅地上の建物をできる限り移動させないで仮換地の割込みを行うことは、「既成宅地については、利用性を考慮のうえ換地地積を定めることができる。」及び「既成宅地については、建物の方位及び敷地を考慮するものとする。」との換地規程五条一項ただし書及び六条四項の趣旨に合致する(なお、本橋助興が違法な改築工事を行つたことを認むべき証拠はない。しかも、本橋助興は、二九区一四号の東隣の二九区四号も仮換地として交付されており、同人が従前よりも位置を東側にずらして改築を行つた経緯があつたとしても、結果的には他の組合員の利害に影響を与えていない。)。更に、二九区一四号の仮換地については仮清算金が二〇五万八八八〇円の徴収となつており、また、本橋助興は全体で一八・五三%(原告武雄のそれは一〇・五七%)の減歩を受けている。以上の諸事情を総合勘案すれば、原告武雄に対する仮換地の指定が、本橋助興のそれに比し公平を失しているものということはできない。

(六)  原告利男の従前地(三)1の仮換地は一六区一号、従前地(三)2及び3の仮換地は一六区二号である。

従前地(三)は、一団の土地を形成し、南側で幅員約一・八メートルないしこれより少し広い行き止まりの区道に面し、西側で幅員約四・五メートルの都道に面した角地に位置し、平担であつて、そのうち従前地(三)2及び3は既成宅地として、従前地(三)1は右宅地に続く畑として利用されていた。これらは、総合的利用価値の高い土地であつて、一平方メートル当たりの比例指数は従前地(三)3が約一一一三個、従前地(三)2が約八九六個、従前地(三)1が約八四三個であつた。しかし、従前地(三)のほとんど全部が国道一七号線の道路用地内に位置するため、飛仮換地の指定となつた。仮換地の一六区一号及び二号も一団の土地を形成しており、西側で幅員六メートルの区画街路、北側で幅員一二メートルの区画街路、東側で国道一七号線に接するほぼ整形の角地である。現状では右道路の路面より最大五メートルほど高くなつているが、右路面自体の傾斜は緩やかで、土留工事又は切土工事を施すことにより良好な宅地として利用可能であり、評定指数も、一六区二号が一一五〇個、一六区一号が一〇六五個と高い。また、減歩率も、一六区二号については〇・八六%の増歩、一六区一号については三八・一四%の減歩であつて、全体では一七・一九%の減歩であり、本件施行地区全体の平均減歩率を下回つている。また、仮清算金は、全体で四二万三七八〇円の交付となつている。なお、被告は、原告利男が希望すれば、被告の負担で右切土工事を行うことを申し出ている。更に、本件施行地区は極めて起伏に富んだ地形であり、場所によつては区画街路の路面との間に高低差の生ずることは避けられず、土留工事や切土工事により整地をしている宅地が相当数存する状況である。

以上の諸事情を総合勘案すれば、原告利男の右従前地と仮換地はほぼ同一条件のものであり、照応の原則に反するものではないというべきである。同原告は、南側で他人の宅地に接していること、北風を遮るものがないこと等の難点を指摘するが、これらの難点は、三方で主要道路に面していることによる客観的利用価値の増大及び将来性により補填されているとみるべきである。

原告利男は、右従前地については四〇区七号を仮換地として指定すべきであつたと主張する。換地規程四条二項は「原位置に公共用地又は保留地の指定があるときはその付近地若しくはこれに相当する換地を交付する。」と定めているところ、右従前地は一六区一号及び二号と四〇区七号とのほぼ中間に位置し、いずれを仮換地に指定するかは被告の裁量に属するものであるが、裁量権の行使に違法のあつたことを認むべき証拠はない。

(七)  原告らは、被告の総代山本富治に対する仮換地指定は原告らに対するそれと比して有利にすぎると主張する。

山本富治の従前地である二四二四番及び二四二二番二に対しては二四区四号が仮換地として指定されている。右従前地の合計面積は三一四・八〇平方メートルであるのに対し、右仮換地の面積は四一四・四九平方メートルであり、三一・六七%の増歩となつている。また、同人は、右仮換地に隣接する二四区一三号の仮換地指定も受けており、これと併せてみれば両側を道路にはさまれた一団の土地を利用できることになり、これら仮換地の総合的利用価値は高い。しかし、二四区四号への仮換地指定は、従前地が建物の建つている既成宅地であるため、建物を移動させないような形で現地仮換地をしたものであり、道路に面するよう設計するためには、東側の他人所有地を取り込む必要があつた。その結果増歩となつたが、右の他人所有地につき独立した仮換地を設計するのも困難であり、設計技術上やむを得ないものである。右仮換地指定については、仮清算金が二四〇万六四八〇円の徴収となつている。また、山本富治は、他に二区画(二四区一三号及び二六区一八号)の仮換地指定を受けており、右二区画の減歩率はそれぞれ三五・八〇%、二三・六七%と高く、三区画全体の減歩率は一三・一三%である。更に、同人は、二四区四号及び一三号の一団の仮換地指定を受けている反面、一筆の土地であつた二四四一番五については、二四区一三号と二六区一八号に分割して仮換地の指定を受けている。

以上の諸事情を総合勘案すれば、山本富治に対する仮換地指定は合理性を有し、同人に不当な利益を与えるものではなく、原告らに対する仮換地指定と比して公平を欠くものとはいえない。

4  したがつて、原告市郎及び原告武雄の仮換地指定処分取消しの請求は、仮に出訴期間を遵守したとしても理由のないものというべきである。

また、原告利男の仮換地指定処分取消しの請求は、結局理由がないのであるから、これを棄却することとする。

五  よつて、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文の規定を適用の上、主文のとおり判決する。

(裁判官 泉徳治 大藤敏 菅野博之)

物件目録、別図一、二及び別表一、二〈省略〉

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